(※写真はイメージです/PIXTA)

親が亡くなった後、遺品整理を進めていくと、生前は知らなかった一面にふと出会うことがあります。それは趣味かもしれませんし、古い手紙、交友関係、意外な預貯金や契約など、予想もしなかった“痕跡”に思わず言葉を失うことも。特に、衣類や身の回り品が詰まったクローゼットは、最期まで生活していた空間と直結している分、故人の人生や思いが色濃く残ります。

「お母さん、こんなものを…?」

「四十九日を前にして、ようやく母の遺品に手をつけようと思いました」

 

そう語るのは、都内在住の会社員・井上志保さん(仮名・52歳)。ひとり暮らしをしていた母・美智子さん(仮名・82歳)が急性心不全で亡くなってから1ヵ月あまり、バタバタと手続きや法要の準備に追われていたといいます。

 

「母は几帳面な人だったので、遺言書や通帳はすぐ見つかったんですが、肝心のお金があまり入っていなくて…。『年金で慎ましく暮らしていたのかな』と思っていたんです」

 

その日、志保さんは母の衣類を整理しようと、クローゼットの奥に手を伸ばしました。分厚いコートの裏に、何やら紙袋が詰め込まれていたといいます。

 

「軽い気持ちで開けてみたら、中にびっしりと封筒が並んでいて。手が震えました。全部、1万円札が入っていて…」

 

合計で約280万円。銀行に預けることなく、自宅に保管してあった現金でした。

 

母・美智子さんは、長年専業主婦として家計を支えてきました。夫(志保さんの父)が亡くなってからは、遺族年金を受け取りながら慎ましい生活を送っていたといいます。

 

「電気ポットも壊れていたのに買い替えなかったし、外食もしない。なんでも『もったいない』と言っていた理由が、少しわかった気がしました」

 

しかも、封筒には「志保へ」「いざというときに」「使うな」といったメモが添えられていたものも。

 

「たぶん、自分の葬儀や、お墓の費用、何かあったときのために取っておいてくれたんでしょう。でも、そんな大事なこと、何も言わずに逝ってしまって…」

 

遺品整理の過程で見つかった現金は、たとえ自宅に保管されていたものであっても「相続財産」として扱われます。

 

相続税が発生する可能性がある場合、税務署への申告が必要になることがあります。現金のほかにも、通帳に記載されていない“へそくり”や“株式の紙券”“金の延べ棒”などが見つかることもあり、財産目録の作成には慎重さが求められます。

 

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