「え、私が働くの…?」
「まさかこの歳で、ハローワークに行くことになるなんて…」
そう語るのは、埼玉県在住の主婦・長谷川美智子さん(仮名・63歳)。結婚を機に仕事を辞めて以来、専業主婦として家庭を支えてきました。夫・剛さん(仮名・66歳)は2年前に定年退職。現在は企業年金を含めて、月17万円程度の年金で生活しています。
「もともと大きな退職金はなかったので、貯金を少しずつ取り崩して生活していました。節約して、なんとかやりくりできると思っていたんです」
ところが、電化製品の故障や親族の冠婚葬祭、車検、医療費など、思わぬ出費が重なり、預金残高がみるみる減っていきました。家計簿を確認していたある日、美智子さんは夫にこう伝えました。
「ちょっと、貯金がもうあまり残ってないの。毎月少しずつ赤字になってるのよ」
すると、夫から返ってきたのは、思いもよらない“他人事”な一言でした。
「え? じゃあ…働けないの?」
「本当にびっくりしました。“なんで私なの?”って思いました。体力的にも不安だし、ブランクがありすぎて、今さら雇ってもらえるのかどうかも…」
それでも、背に腹は代えられません。美智子さんはまず、地元のハローワークに足を運びました。相談窓口では「60代女性向け」の求人もそれなりにあり、介護施設の清掃やスーパーの品出し、飲食店の裏方業務などが紹介されました。
「時給は1,050円とか、1,100円とか。でも、週2~3回、短時間ならなんとかできそうだと思って、応募してみることにしました」
最初の応募先では、「体力面に不安がある」として不採用に。次の求人も「経験者優遇」の文字に尻込みしてしまい、面接にも至りませんでした。それでもあきらめず、5社目でようやく、地元スーパーの品出しスタッフとして採用が決まりました。
「週3日、朝の3時間だけ。最初は筋肉痛で大変だったけど、少しずつ慣れてきました。生活に少し張りが出た気もします」
