「娘はずっと実家にいて、就職したことがないんです」
「私たちが娘の生活費を出しています。もちろん、本人に悪気はないんでしょうけど…正直、限界です」
そう話すのは、千葉県に住む川端文雄さん(仮名・78歳)。妻・和子さん(仮名・75歳)と、ひとり娘の真奈美さん(仮名・43歳)と暮らしています。
真奈美さんは大学卒業後、就職活動がうまくいかず、そのままアルバイト生活に。数年後にアルバイトもやめ、以後はほぼ“専業主婦状態”のまま、実家で暮らし続けています。
「昔は“うつ気味”というか、外に出るのも辛そうで、無理に働けとは言えませんでした。でも、もう40代ですからね…。こちらも年金生活。このままでは、家族ごと行き詰まってしまうと思うんです」
川端夫妻の世帯収入は、年金合わせて月約26万円。持ち家で住宅ローンは完済していますが、固定資産税や医療費、食費、光熱費など、出費は年々増えています。
「娘のスマホ代、保険、衣類代、時には化粧品代まで…。少しずつのつもりでも、トータルすれば毎月10万円近くなっています」
娘に「働いてほしい」と伝えたこともあるといいますが、返ってくるのは「この歳から何の仕事があるの?」「面接で落とされるに決まってる」といった言葉ばかり。ハローワークに行っても「登録だけで終わった」と話す真奈美さんに対し、夫妻もだんだん何も言えなくなっていったといいます。
このように、80代の親が50代前後の子どもの生活を支える構図は、いわゆる「8050問題」として近年注目されています。
背景には、氷河期世代の就職難や非正規化、メンタル不調による離職などがあり、「子どもが一度レールを外れると、再起しにくい社会構造」があると指摘されています。
親が年金で支える状態が長引けば、いずれ親の介護+子の扶養という二重負担が発生し、共倒れにつながるリスクもあるのです。
