(※写真はイメージです/PIXTA)

都市部から地方への移住を検討する人が増えています。背景には、物価の安さや自然環境への憧れ、テレワークの普及による柔軟な働き方の広がりなどがあり、「都会にこだわらなくても生きていける」と考える人が増えているのです。特に「家賃が格安」「空き家が多い」といった物理的コストの低さは、地方移住を後押しする要素になっています。しかし、実際に暮らし始めると「安さの裏にある現実」が見えてきた——そんな声も少なくありません。

制度はあるが、使いこなすには「地域慣れ」が必要

川村さんが利用したような「空き家バンク制度」や「移住支援金制度」は、各自治体が都市圏からの移住者獲得のために整備しているものです。

 

【空き家バンク】自治体が地域の空き家情報を提供し、賃貸・売買のマッチングを支援

 

【移住支援金】東京圏からの移住+起業や就労などの条件を満たすと、最大60〜100万円の支援が受けられる(※自治体・年齢により異なる)

 

一方で、移住後の「定着支援」は自治体によって差が大きく、地域活動や地縁の中に自然と溶け込めるような仕組みがないと、“経済的には助かっても、心理的孤立を深める”という問題が生じやすいのです。

 

「自分には“お金を払って他人と距離をとる”都会の暮らしのほうが合っていたんだと、あとで気づきました。地方はお金はかからないけど、人間関係の密度が高くて、性格次第ではけっこうしんどいんです」

 

その後、川村さんは元の職種に近い在宅業務を再開し、再び都市近郊に転居。地方での1年間は「経験としては無駄じゃないけれど、気楽とは言えなかった」と振り返ります。

 

地方移住は、成功すれば生活コストの削減やストレスの軽減につながる一方で、「生活のリズム」「人間関係の濃さ」「支援制度の実効性」など、“目に見えないコスト”が重くのしかかることもあるのです。

 

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