「年金は月26万円、でも怖くて使えない」
「今月もまた、貯金を切り崩さずに済んだ。そう思って眠りにつくんです。でも夜中にふと目が覚めて、心のどこかがザワザワしているんですよね。『本当にこの先、大丈夫だろうか?』って」
そう語るのは、東京都在住の飯島敏夫さん(仮名・75歳)。妻・典子さん(仮名・72歳)と二人暮らし。敏夫さんは大手メーカーに勤務し、定年まで勤め上げました。厚生年金と企業年金を合わせて、毎月の受取額は2人で約26万円。さらに、退職金や長年の預貯金を含めて貯金は約4,000万円あるといいます。
それでも、「将来が不安で、思いきって使えない」といいます。
「去年、妻が腰を悪くして入院したんです。手術は保険でカバーできましたが、リハビリ費用や差額ベッド代、通院のタクシー代なんかが積み重なって、けっこうな金額になりましてね。やっぱり、病気になると一気にお金が出ていくなと思いました」
典子さんは退院後、介護保険でデイサービスを利用するようになりましたが、自己負担分も月に1万~2万円程度発生しています。ほかにも、エアコンの買い替えや実家の修繕、親族の香典など、「大きくはないが確実に減っていく支出」が続いています。
さらに、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの入所型施設に入れば、月額10万〜20万円超の負担が生じるケースも少なくありません。介護は突然始まり、長期化することも多く、「いつまでかかるか分からない」という点で、老後資金を消耗させる大きな要因となります。
「私も妻も、今はまだ要介護状態ではありません。でも、これから認知症になるかもしれないし、骨折で寝たきりになるかもしれない。そう思うと、貯金は“使うためのお金”というより、“崩してはならない最後の命綱”みたいに感じてしまうんです」
