(※写真はイメージです/PIXTA)

老後資金に関する不安は、収入や貯蓄額にかかわらず多くの人が抱える問題です。客観的には“十分に備えている”ように見える人でも、医療・介護・物価上昇などへの漠然とした不安を口にします。金融庁の報告書(2019年)でも「老後資金として2,000万円が必要」と示されたことが話題になりましたが、個別の生活状況によって、老後の出費や不安の感じ方には大きな差があります。

「年金は月26万円、でも怖くて使えない」

「今月もまた、貯金を切り崩さずに済んだ。そう思って眠りにつくんです。でも夜中にふと目が覚めて、心のどこかがザワザワしているんですよね。『本当にこの先、大丈夫だろうか?』って」

 

そう語るのは、東京都在住の飯島敏夫さん(仮名・75歳)。妻・典子さん(仮名・72歳)と二人暮らし。敏夫さんは大手メーカーに勤務し、定年まで勤め上げました。厚生年金と企業年金を合わせて、毎月の受取額は2人で約26万円。さらに、退職金や長年の預貯金を含めて貯金は約4,000万円あるといいます。

 

それでも、「将来が不安で、思いきって使えない」といいます。

 

「去年、妻が腰を悪くして入院したんです。手術は保険でカバーできましたが、リハビリ費用や差額ベッド代、通院のタクシー代なんかが積み重なって、けっこうな金額になりましてね。やっぱり、病気になると一気にお金が出ていくなと思いました」

 

典子さんは退院後、介護保険でデイサービスを利用するようになりましたが、自己負担分も月に1万~2万円程度発生しています。ほかにも、エアコンの買い替えや実家の修繕、親族の香典など、「大きくはないが確実に減っていく支出」が続いています。

 

さらに、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの入所型施設に入れば、月額10万〜20万円超の負担が生じるケースも少なくありません。介護は突然始まり、長期化することも多く、「いつまでかかるか分からない」という点で、老後資金を消耗させる大きな要因となります。

 

「私も妻も、今はまだ要介護状態ではありません。でも、これから認知症になるかもしれないし、骨折で寝たきりになるかもしれない。そう思うと、貯金は“使うためのお金”というより、“崩してはならない最後の命綱”みたいに感じてしまうんです」

 

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