政情が安定し、経済も人口も回復傾向にあるポルトガル
現在のポルトガルには、移住に興味がなくても投資の好機といえる要素がたくさんあります。前回ご説明した、政府によって発布されたポルトガル黄金ビザ計画(Portugal Golden Visa Programme)は、50万ユーロ以上の不動産をポルトガル国内で購入することのほかに、いくつかの条件を満たせば一家3世代で移住することができ、居住権取得後、5年で永住権を申請することができるプログラムです。
しかし、居住も永住も希望されない人は、通常の海外不動産投資としてポルトガルの不動産を購入し、インカムゲイン、売却時のキャピタルゲインを得ることが可能です(その場合、購入される不動産の最低価格に規定はありません)。
ポルトガル黄金ビザ計画(Portugal Golden Visa Programme)の詳細についてご説明する前に、今回はポルトガルにおける純粋な不動産投資の現状についてご紹介します。
まずは、ポルトガルについて簡単にご説明します。IMF(国際通貨基金)の統計によるとポルトガルの人口は、2014年に約1040万人、2015年に1041万人、2016年の10月推計では1042万人と、2008年の経済危機以来、減少していた人口が回復の兆しを見せています。
首都はリスボン、その他主要都市として、ポルト、コインブラ、アマドーラ、セトゥーバル、ブラガ、アルマーダ、ペドロなどがあります。面積は日本の約4分の1で、2015年のIMF発表によると、1人当たりのGDPは1万9117ドルでした。
2016年1月に当選したマルセロ・レベロデソウザ大統領は、中道右派の野党で社会民主党の元党首です。党派間の融和を訴え財政緊縮策の見直しを掲げつつ、行政の実権を握る中道左派の与党、社会党のコスタ首相と協調し、EUとの関係を調整しつつも安定した政治を維持しています。
経済の面では、2011年にEU(欧州連合)やIMF(国際通貨基金)などから総額780億ユーロの金融支援を受け、それから3年間、ポルトガルはコエリョ政権の元、EUやIMFから課せられた緊縮財政策を断行しながら労働市場をはじめとした構造改革に着手し、2014年5月に金融支援を「卒業」して自力で財政運営に戻りました。
2013年まで経済危機の影響を受けて上下を続けていたのが、2014年には0.9%、2015年には1.5%と徐々に上昇し、2016年は最終的に1.6%、2017年には1.8%になると欧州委員会は予測しています。
ポルトガルを含む西ヨーロッパの多くの国では、東南アジアの一部の国々などと異なり、外国人は土地・建物ともに購入・所有することができます。また、ポルトガルでは相続税も贈与税がかかりません。
海外不動産投資国を決定する上で重要な要素となるのは、政情不安がないこと、土地・建物を合法的に所有できること、人口が増加していて、将来の空室率が低くなると予想されること、経済成長をしていること、相続税、贈与税がない、または低いことなどがあげられていますが、ポルトガルは政情も安定し、理論上大きな不安要素は見当たりません。
【図表1 ポルトガル全体図】
右肩上がりの不動産価格
ポルトガルの「Dinheiro Vivo」新聞によると、近日ポルトガル国家データ統計局(INE)によって2016年の第三四半期の不動産価格指数(HPI)は、前年同時期と比べて7.6%上昇(第二四半期の同上昇率は6.3%)しました。2016年第二四半期と比較して1.3%の上昇を見せています。
【図表2 不動産価格指数】
同じく2016年第三四半期、ポルトガル全体の不動産取引件数は3万1535件に達し、昨年同時期と比較して15.8%上昇、取引総額は36億ユーロに達しました。
【図表3 不動産取引件数】
不動産取引件数が上昇した要因は、ポルトガル黄金ビザ計画の実施、年間にわたり気候がよく快適な生活環境であるため別荘として購入、海外の富裕層からの投資、生活費が安いことからヨーロッパを中心とした定年退職層による購入、そして2008年の経済危機からの回復により購買能力を取り戻したポルトガル人による購入の増加などが挙げられます。この傾向はまだ続くと思われます。
また、さらに注目すべきは、Global Property Guideによると、リスボンにおける2016年第二四半期の利回りは4.5-6.3%です。
【図表4 リスボンにおける2016年の利回り】
ヨーロッパへの不動産投資に対しては、現在のEU情勢の不安定さなどから慎重になる方もいらっしゃるかもしれませんが、入居者がいない場合、特定期間の賃料保証を実施している不動産業者や、決まった期間までに売却を決定した場合に、本人が借り主を探す必要がなく買取保証を行っている不動産業者を利用する方法もあります。
次回は「ポルトガル黄金ビザ計画」に申請、現地で生活されるケースについてご紹介します。