以前より低金利を提示してきたものの、まだまだ高い
仕事柄、資金調達における、銀行交渉のナマの声を聞く機会が多くあります。そこには、
貸す側のしたたかさと、借りる側の交渉力のあり方を、垣間見ることができます。
前回の続きです。
融資枠を失った元メイン銀行の営業本部長が、
「借りなくてもいいので、当座貸越の枠だけでも残して下さい!」
と、懇願してきました。その真意は、
「枠だけでもあれば、決算書をいただけますから」
ということでした。
しかし、むやみに当座貸越枠を契約することもないので、
「契約の条件によって考えます」
ということになりました。
「わかりました! ありがとうございます! 金利を優遇させていただきますので! よろしくお願いします!!!」
そして後日、金利が出てきました。
「以前より大きく下げさせていただきました!」
と、提示されたのは、1.8%でした。
確かに、その企業では以前、2.8%とか、3%、といった金利で融資を受けていました。しかし、今は、1%以下は当たり前で、私たちは、0.5%を下回らせなさい! と、申し上げています。
「いやいや、これはまだまだ高すぎますよ」
メイン銀行をいつでも変えられるように枠を残す
ということで、再度交渉し、枠だけは残す、ということになりました。
というのは、その地域には、そもそも銀行が少ないのです。さらに、今回メイン銀行の立場を失ったA銀行は、かつては逆に、その立場を奪った銀行でもあったのです。実は、約15年前、メインの立場を失ったのが、今回協力してくれた、B銀行だったのです。つまり、また入れ替わっただけ、なのです。
今後もいつ、同じようなことが起こるかわかりません。なので、枠だけなら残してもいいか、ということになったのです。
今の各支店長は、15年前のいきさつを、ご存じありません。その15年前、メインをA銀行に変えるのに協力してくれたのが、今回、本部から飛んできた、営業本部長だったのです。それを取り返される、というのは、営業本部長にとっては、大いなる屈辱だったのです。
加えて、
「金利を低くさせてもらいますから」
という提案も、あちこちで聞くフレーズです。その言葉に乗せられて、あっさり契約する。そして、お聞きすると、全然低くない、というパターンもよく見かけます。
以前より低いだけで、世間相場より全然高い、ということが、よくあるのです。本当に低いかどうか、判断する力や知識を、経営者や財務担当者は、持っていて欲しいのです。