「つらいとか、情けないとか、そういう感情よりも」
昌代さんは言います。
「生活保護を受けるほど困ってはいない、って言われるかもしれない。でも、余裕は全くないんです。たとえば急にガス給湯器が壊れたら、もう終わりですよ」
年金月12万円は、生活保護基準よりは上に見えるかもしれません。しかし、東京都内の最低生活費基準(月約13万4,000円※2024年度モデル)と照らし合わせると、実際には不足しており、貯蓄を取り崩さなければ生活が成り立たない水準です。
医療費の一部負担や、物価の高騰が重なれば、生活保護に該当しない層こそ“制度の狭間”に取り残されやすいのが実情です。
「若いときは“歳をとっても自分でなんとかする”って思っていたんですよ。でも、想像よりお金がかかるし、想像より“何をあきらめるか”を考える生活になるんですね」
昌代さんはそう言って笑います。
「つらいとか、情けないとか、そういう感情よりも、“次の冬どうするか”のほうが大事」
この冬も、昌代さんは電気毛布を出すタイミングを見計らいながら、今日のお風呂をどうするかを考えています。
昌代さんのように、「声をあげない我慢」を日々繰り返している高齢者は少なくありません。「制度の対象」ではないけれど、あと一歩で生活困窮に陥る“予備軍”は、これからも増えていくでしょう。
“入浴を我慢する生活”――。誰にとっても起こりうる、老後のリアルがここにあります。
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