(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者の介護を「施設に任せる」という選択は、家族の負担軽減に大きく貢献します。しかし、費用面の負担は重く、本人と家族の“感情的な距離”も想像以上に大きくなることがあります。要介護2以上で入所できる「特別養護老人ホーム」などは所得に応じた軽減措置がありますが、入居できるのは一部。民間施設では月額20万円前後が相場で、年金だけではまかないきれず、家族の仕送りや貯金の取り崩しが前提になるケースも少なくありません。

「え、父さんがいない?」職員からの電話

「佐野さん、申し訳ありません。お父さまが外に出られてしまったようで…」

 

都内の介護付き有料老人ホームに父・勝彦さん(仮名・83歳)を預けていた佐野誠さん(仮名・54歳)は、その日、仕事中に施設からの着信を受けました。職員の声は平静を装っていましたが、内容は明らかに緊急でした。

 

「外に出た? どこに?」「今、職員が周囲を捜索しておりますが…」

 

居ても立ってもいられず、誠さんは車で現地へ向かいました。

 

30分後。父・勝彦さんは施設から2キロほど離れた商店街の一角で発見されました。といっても、道端でうずくまっていたわけではありません。

 

「父さん、ここにいたの?」

 

誠さんの問いに、勝彦さんはまっすぐ答えました。

 

「預金を確認しに来たんだよ。年金だけで足りるか、どうしても知りたくて」

 

そこは、勝彦さんが長年使ってきた地方銀行の店舗前。施設に入居する前、毎月年金の振込確認をしに通っていた場所でした。

 

施設に戻ったあと、職員の立ち合いで父の部屋を確認すると、ノートの切れ端にびっしりと数字が書き込まれていました。

 

「年金月14.6万円、施設費22万円、差額▲7.4万円、仕送り月5万円、貯金残り…」

 

まるで“家計簿”のようなメモ。小さな電卓と、残高確認の明細が並んで置かれていました。

 

誠さんは絶句しました。父はすべて把握していたのです。

 

「だから、施設を抜けてまで“現金がまだ残っているか”を確認しに行ったんだとわかりました。あの人なりの“危機感”だったんだと思います」

 

 \1月20日(火)ライブ配信/
調査官は重加算税をかけたがる
相続税の「税務調査」の実態と対処方法

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※本記事のインタビューではプライバシーを考慮し、一部内容を変更しています。

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