「あれ? この振込、誰から?」
「最初は、誰かが間違えて送金してきたのかと思いました」
そう語るのは、会社員の高橋明美さん(仮名・52歳)。3年前から、要介護2の認定を受けた80代の母親と2人で暮らしています。
通院の付き添いや、週3回のデイサービス利用、月2回の訪問看護など、介護保険を活用しつつ、日々の介護を担ってきました。そんなある日、明美さんは母の通帳記帳をしていて、ふと目が止まります。
「10万円ちょっとの入金があったんです。差出人名は“XX市福祉課”。でも、介護保険の還付にしては額が大きすぎる気がして…」
疑問に思った明美さんは、念のため市役所の福祉課に電話しました。返ってきた答えは、意外なものでした。
「お母さまが以前申請されていた“生活支援名目の一時給付金”が、今月入金されました。あくまで一時給付なので、ご確認ください」
明美さんは驚きました。申請した覚えもなければ、支給される話も聞いていません。
「たしかに去年、母がデイサービスを増やした時期があって、そのタイミングでケアマネさんが“書類を出しておきますね”と言っていた記憶があるけれど、それがこれだったのかと」
ところが、その翌月――母が通うデイサービス施設から届いた利用明細に、明美さんは再び驚きます。
「“補助金分を含めた差額分をお預かりします”と書いてありました。つまり、入金された10万円は、すでに“介護費の支払いに充てられますよ”という前提だったんです」
後から制度名を確認すると、該当したのは「市町村独自の介護補足給付」。要介護者の収入状況などに応じて支給されるもので、利用者が現金を自由に使えるわけではなく、自治体によっては施設等が“代理受領”する前提で支給されることもあります。
「つまり、“母のために振り込まれたお金”ではあるけれど、母や私が自由に使っていいものではなかったんです」
