「法定監査」とは?
では、なぜ法定調書を提出するのでしょうか。それは、税務署が支払った側と受け取った側の申告を「突合(とつごう)」するためです。
たとえば、Aさんの会社がBさんという個人事業主Bさんに業務委託費50万円を支払ったとしますAさんはBさんへの支払調書を作成し、Bさんに渡します。Bさんはこれに基づき確定申告をしますが、もしBさんが申告を行わなかったり、実際の支払額より少ない30万円で申告したりした場合、Aさんの会社から提出された法定調書と食い違いが生まれます。
このように、支払側・受取側の両方から情報を集めることで、税務署は申告漏れや誤りを発見し、脱税を防ぐ仕組みです。
そして、この法定調書が正しく提出されているかを調査するのが「法定監査」です。
監査が来る理由としては、例年との変動が大きい、書類が多く漏れがちな業態、個人への支払いが多く不正の可能性が疑われる、などが挙げられます。もちろん、申告書の内訳書などと法定調書を突合してチェックも行われます。
法定調書に漏れや間違いがあっても、通常は再提出すれば完了し、修正申告や納税には至りません。あくまで資料収集という側面が強いためです。
しかし、確認した内容に気になる点があれば、後日「税務調査」に発展する恐れがあります。もちろん、法定監査と税務調査は別物であり、その場で税務調査に移行することはありません。税務調査には「事前通知」が必須だからです。しかし、後日改めて税務調査の通知が来る可能性は十分にあります。
たとえば、法定監査で支払先に無申告者がみつかれば、その無申告者に対して税務調査が入ることも。また、法定調書の内容自体に大きな漏れや差異があれば、支払ったAさんの会社が、後日、税務調査の対象となるのです。
迎えた、法定監査の日
話をAさんに戻します。調査官から指示された書類を準備して法定監査の当日を迎えました。経営者仲間から聞いていた税務調査の提出書類とは少し異なり、量も多くなかったため、「大丈夫だろう」と思っていました。
ところが、提出書類には多くの漏れがみつかったのです。まず、家賃。個人の貸主に支払っている場合は提出義務がありますが、Aさんは管理会社に支払っていたため、その先の家主が個人であると認識しておらず、提出が漏れていました※。
それだけなら大きな問題にはならなかったのですが……。
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