預貯金が中心の財産、でも手数料に後悔も
ご自身の財産には預貯金や金融商品があります。60歳を超えてからは母親の介護中心の生活となり、収入は年金程度。生活費のためにいままでのたくわえを解約して使っていますが、なかには解約時に多額の手数料がかかる金融商品もあり、「こんなことなら最初から手を出さなければよかった」と後悔しているそうです。
「銀行や証券会社に勧められて契約したけれど、結局は自分にとって得だったのかどうか……」
多くの方が同じ思いを持つ部分ではないでしょうか。
娘への配慮と長男への心配
ご家族は2人のお子さん。娘さんはとても協力的で、日常のことから手続きまでサポートしてくれています。ただ、それだけに「金銭的な負担までかけてしまっているのではないか」と心配されています。
「財産は2分の1ずつ分けるつもり」とお話しされましたが、長男は体調面の問題で仕事が安定せず、収入も不安定です。娘と息子、それぞれの生活状況を考えると、本当に半分ずつでいいのか……。その迷いが見えてきます。
不動産の課題――今後も住み続けるか、それとも
もう一つの大きな課題は不動産です。松井さんと2人の子ども達とはずっと同居してきました。1階は亡くなった両親の部屋、2~3階が松井さんと子ども達の部屋です。
母親が健在の時はずっと自宅で生活したいということで、母親は最期まで自宅住まいでした。けれども、これからはそう簡単にはいかないと松井さんは考えています。
すでに1階は空いていますし、かつては夫もいて2~3階は親子4人で住んでいましたが、夫とは離婚して夫が出ていきましたので、現在は松井さんと子どもたちの3人住まい。このまま住み続けるか、それとも将来的にはマンションに住み替えるか、判断を迫られることになります。
周辺地域では、空き家が増えたり、古い家を壊して新しいマンションが建ったりという動きが目立つようになってきました。
「もし自分が亡くなった後に、この家を残したら、娘にとって重荷になるのでは……」という心配もあります。
不動産は「使い方」「残し方」によって、大きくプラスにもマイナスにもなります。売却して現金化するのか、賃貸活用するのか、はたまた建て替えるのか。この判断をどうするかが、今後の最大のテーマだと言えますので、ご自宅の活用の仕方を中心にご提案、サポートしていくことにしました。
71歳の今だからできる準備
ご相談者の松井さんは、「母の長寿を見て、自分の将来を見つめ直し、家族に迷惑をかけないための準備をしたい」と願っています。
母親の財産は娘と2等分し、息子には母親がかけていた生命保険の受取人となっているので受けとることができますので、3人とも現金が入る相続になります。
母親の相続手続きは遺産分割協議書を作成し、預金や株の解約手続きと保険の受け取りをすれば終わりますので、シンプルです。
やはり、自宅をどうするかが大の課題といえます。固定資産税は年間60万円以上もかかり、庭の手入れも必要で、維持するにはかなりの費用が必要で、松井さんの月額6万円程度の年金ではとても足りない状況。
生活費不足を補うには、評価が2億円程度の土地付き自宅を活用して収入を生み出す方法を考えるのが妥当です。方法は3つあります。
・建物を壊して賃貸併用住宅に建て直す⇒懸念事項 建築費がかかる 借入が必要
・売却して半分程度で住替え、半分は賃貸物件に⇒懸念事項 売却価格により住み替えが変わる
土地は84坪ですが、敷地延長の地形で、間口が2m、2つに分割することはできません。よって売却するなら全部を売却して、住み替えが必要です。
住替えただけでは生活費が捻出できませんので、できるだけ高く売却して、半分は自宅、残り半分で家賃が入る賃貸物件を購入することができれば理想的です。
お母さんの相続手続きをしながら、すでに松井さんの相続の準備をすることになります。まだ70代ですが、不動産から収入を作るにはなるべく早いうちにがお勧めです。
曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
