私たちのお金が減っていく理由…住宅ローンの返済負担がアップ
「生涯でもっとも大きな買い物は住宅」という人も多いでしょう。総務省のデータによれば、勤労者世帯で住宅ローンのある世帯の割合は35.9%となっていますから、大勢の人がローンを組んで家を買っています。
残念ながらここでも、支出が増える可能性があります。なぜなら2024年7月末、日本銀行が政策金利を0~0.1%から0.25%へさらに2025年1月からは0.5%へ引き上げたためです。
政策金利とは、日本の中央銀行である日本銀行が一般の銀行へお金を貸し出す際の金利です。これが上がることで、私たちが銀行などから借りている住宅ローンの金利も上がります。
政策金利の上昇分は貸出金利に反映させなければ、銀行側が損をしてしまいます。日銀の利上げ後の現状を見ると、住宅ローンの変動金利上昇が2024年10月から本格的に始まりました。
三菱UFJ・三井住友・みずほ・りそな・三井住友信託の大手5行が、既存の変動金利契約の住宅ローンについて0.15%利上げをし、2025年以降も見直しが行われています。
これから家を買う人たち、もしくはすでに買っている人たちは、その大半が変動金利を選択しています。残念ながら、これらの銀行から変動金利でお金を借りた人は、支出が増えることになります。
仮に変動金利で住宅ローンを3000万円借りている人のケースですと、これまでの0.1%から0.25%へ、0.15%借入金利が上昇する場合、単純計算では年間4万5000円の負担増となります。
住宅事情の悪化に逃げ道はない
ちなみに住宅ローンをネット系の銀行で借りている人には、2024年はまだ影響が出ていませんでした。なぜならネット系銀行は競争が激しい分、企業努力で利上げをしない選択をしたからです。
ただ、その後も金利上昇が続いたことで、ネット系銀行にも限界が訪れ、2025年からは利上げが行われています。先の大手銀行5行は、住宅ローンが貸出のメインではないため、先に利上げに踏み切ったと言えます。
なお賃貸の相場も上がっているため、「それなら賃貸で」「住宅ローンを組んでいないから安心」という逃げ場もないのが、厳しいところです。すでに支払いが終わっている住宅を所有しているのではない限り、支出増を避けるのは難しいと言えるでしょう。
政策金利は今後も上がっていく可能性が高いです。住宅についての支出を避けることができないならば、他のところで増やして補うほかはありません。金利上昇によって負担が増える程度のお金を増やして初めて、やっと現状維持になる。今はそういう時代なのです。
永江将典
公認会計士・税理士

