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日本に必要な「労働者から資本家へのパラダイム・シフト」
たとえば、イタリアの自動車メーカー「フェラーリ」を想像してください。フェラーリの株式を1株でも保有すれば、あなたはその企業のオーナーの1人になります。これは、フェラーリのスポーツカーを1台購入してガレージに飾るのとは本質的に異なります。
フェラーリを1台買って飾っておく行為と、膨大な数のフェラーリを創り出す能力を自らのバランスシートに組み込む行為のどちらが魅力的でしょうか? フェラーリという会社は、年間約1万3000台もの車を製造し、1台当たり7000万円以上で世界中に販売しています。その「極めて高いブランド価値を背景に、高収益を生み出す仕組み」を、あなたはオーナーの1人として間接的に所有できるのです。
つまり、フェラーリが稼ぎ続ける限り、あなたのバランスシートはその成長を取り込んでいきます。多くの日本人は、日本企業に雇われる「経営者」や「労働者」となります。
経営層であれ一般社員であれ、株式を持たない限り、基本的には「労働力を提供し、給与を得る立場」にとどまります。もちろん自己投資をしてスキルを磨き、出世すれば労働者としての収入は増えるでしょう。
しかしこれはあくまで「量的な変化」、具体的には「労働時間」と「時給」の掛け算による変化に過ぎません。すなわち労働時間を増やすか、時給を上げるかの違いであり、根本的な収入構造は変わらないのです。
一方、株式を保有することで得られる投資所得は「資本家」の所得です。これは労働所得と異なり、時間や労力を直接投入せずに得られる収入源です。ここで起こるのは「質的な変化」であり、まさに労働者から資本家へのパラダイム・シフトです。
労働者から資本家へ。このポジショニングの変化こそが、あなたを「寝ている間」にもお金を稼ぐ立場に押し上げてくれるのです。なぜなら、あなたが眠っている間も、優秀な経営者や従業員たちがあなたの代わりに働き、事業を成長させてくれているからです。
資本家にとっての敵…インフレを知るべし
ここで、目線を変えてインフレについて考えてみましょう。インフレは、現金や固定利回りの資産を保有している人々にとって、最も静かで見えにくい敵です。
物価が上昇するということは、あなたの手元にあるお金の購買力が時間とともに確実に減っていくことを意味します。かつて100円で買えたものが、数年後には120円、150円を支払わなければ手に入らない――これがインフレの本質です。
とくに現在、世界はデフレからインフレへの大きな転換点に直面しています。過去数十年にわたり、「グローバリゼーション(世界の一体化)」が進展することで、人・モノ・金・情報が国境を越えて自由に行き来し、企業は世界中で最もコストの安い場所で生産を行うことができました。
その結果、供給コストが低減し、私たちは安価な商品を享受できたのです。これが「デフレ圧力、ディスインフレの正体」であり、長い間、世界経済の標準的な状況となっていました。
ところが、近年この構図が大きく変わりつつあります。2018年の米中貿易戦争を皮切りに、世界は「デ・グローバリゼーション(反グローバル化)」へと舵かじを切り始めました。
新型コロナパンデミックがそれを加速させ、今や各国が自国優先の政策を打ち出す中、物流網は混乱し、供給制約が顕著になっています。
さらに、ロシアによるウクライナ侵略をはじめ、世界各地で地政学的リスクが高まり、サプライチェーンは細断化。これらの結果、原材料費・輸送費・エネルギー価格が上昇し、「コスト・プッシュ・インフレ」が世界を覆うようになりました。
経済が低迷しているにもかかわらず、物価は高止まりし、スタグフレーションの様相を呈しています。

