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オーナー型株式投資はBS(バランスシート)発想
オーナー型株式投資においては、PL発想ではなく、BS発想であるという視点が重要になります。
売買型株式投資は「PL(損益計算書)発想」です。これは「どれだけ稼げたか(売買益)」に集中する考え方で、日々の損益が投資判断の中心になります。つまり自分の簿価が売買の基準となっていて、時価が簿価を上回っていれば「利食い」、時価が簿価を下回っていれば、残念ながら「損切り」するという発想です。そして時価が簿価を大きく下回っていると「塩漬け」することになります。
この発想は、安く買って高く売ることが目的であり、成功の指標は「その瞬間にいくら利益を出したか」です。この考え方では、今すぐ現金化できる利益を最重視するため、長期的な企業の価値創造には意識が向かないのも当然です。
一方、オーナー型株式投資は「BS(バランスシート)発想」です。ここでいうBS発想とは、単に投資先企業のバランスシートに注目することではなく、自らのバランスシートに強い企業の稼ぐ力を取り込み、自分自身の資産の稼ぐ力を高めるという考え方を指します。
つまり、企業の成長エンジンを自分の資産として組み入れ、その企業が生み出す将来の利益の一部を、オーナーとして享受し続けることが目的なのです。BS発想では、目先の損益や短期的な株価の変動に振り回されるのではなく、「時間の経過とともに自分の資産がどれだけ力強く稼げるようになるか」が最大の関心事です。
たとえば、優れた企業は利益を積み重ね、それを再投資に回すことで新規事業を立ち上げたり、生産能力を強化したりします。その結果として企業価値が高まり、株主である自分の資産も同時に成長していきます。そういった優れた企業の稼ぐ力を自分のバランスシートに接続し、時間をかけてその力を自分の資産に内在化させるという極めて本質的な投資アプローチです。
PL発想が「今日いくら稼げたか」という短期的な収益に焦点を当てるのに対し、BS発想は「将来、どれだけの稼ぐ力を自分の資産に蓄えられるか」を問い続けます。この違いは単なる時間軸の差ではありません。
「お金をその場限りの道具として扱うか、それとも投資先企業を将来にわたって稼ぎ続けるパートナーとして自らの資産に取り込めるか」という、投資家としての根本的な価値観の違いを示しています。
オーナー型株式投資におけるBS発想は、自分自身のバランスシートを企業と共に育て上げることで、長期的かつ持続的な資産形成を実現するための強力な武器となるのです。
繰り返しになりますが、オーナー型株式投資の本質は、自分のバランスシートに「他者の稼ぐ力」を取り込むことにあります。多くの人にとって「自分の稼ぐ力」とは、自らの時間を使い、労働を通じて得る給与所得を指すでしょう。
しかし、株式を保有するという行為は、単に紙切れを手に入れることではありません。あなたが選んだ企業の「稼ぐ力」そのものを、自分の資産構造の中に取り入れることができるのです。
