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義父の死と、玄関に積まれた「謎の大荷物」
63歳の田村誠さん(仮名)は、一つ年下の妻・陽子さん(仮名)と結婚して40年。大きなケンカもなく、子どもたちも独立して、穏やかな2人きりの生活を送っていました。年金は夫の分で月18万円ほどの見込み、妻が65歳になればさらに月6万円が加わり、貯蓄も2,000万円程度。贅沢をしなければゆとりある老後が過ごせる見通しでした。
そんなある日、陽子さんの父、田村さんにとっての義父が他界しました。
葬儀を終えてしばらく経ったお盆のこと。妻の実家に向かう道すがら、田村さんはいつもどおり気が重くなっていました。陽子さんの実家は車で1時間ほどの距離ですが、正月・GW・お盆と年に数回の帰省の習慣は、彼にとって毎回どっと疲れる行事だったのです。
その日も気乗りしないまま門戸をくぐると、いつもと違う光景が目に飛び込んできました。玄関に、見覚えのあるスーツケースと大きな段ボールが積まれています。ふと荷物の送り状をみると送り主は妻の陽子さんでした。
「なんで、うちの荷物がここに……?」
この荷物が、田村さんの穏やかだった老後生活を一変させる転機となったのです。
「お母さんが心配だから…」妻の突然の別居宣言
玄関に積まれた荷物をみて、陽子さんは慌てた様子で口を開きました。
「……お母さん、ひとりになったでしょ。しばらく、こっちに住もうと思って……」
80歳を過ぎた母が一人になることを心配し、一緒に住みたい。しかし、夫が自分の実家を苦手なのを知っているため、なかなか言い出せなかったというのです。
荷物の正体は、自宅から先に送っておいた妻の身の回り品でした。偶然にも、その荷物が田村さんの到着とほぼ同時に配達されてしまったのです。突然の妻の言葉に、田村さんは怒りを抑えきれませんでした。
「一言の相談もなく勝手に……!」
いつも穏やかだった田村さんが、思わず声を荒げます。
その態度に、陽子さんもこれまで溜め込んでいた感情を爆発させ、激しい口論になってしまいました。言い争いの末、妻はそのまま実家に残り、以降、家に帰ってくることはほとんどなくなってしまったのです。

