住宅ローン控除の“安心感”と落とし穴
政府は、住宅購入を支援するために住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を設けています。
2025年時点では、年末時点のローン残高の0.7%を13年間、所得税・住民税から控除できます。しかし、世帯年収が高い共働き世帯の場合、控除枠の一部しか使い切れないことも多く、「思ったほどの節税効果がない」と感じる人も少なくありません。
また、7,500万円の住宅ローンを35年で組んだ場合、毎月の返済額はおよそ20万〜22万円。さらに固定資産税、修繕費、保険料を加えると、年間の“住居コスト”は100万円を超えるケースもあります。
「金利が低いから安心」という判断だけでは、長期的な生活設計に歪みが生じやすいのです。
田村夫妻は、思い切ってライフプランの見直しを行いました。
家計簿アプリで支出を整理し、ローンの一部を繰上げ返済。同時に、妻のキャリアを優先し、家事代行サービスを月数回利用するようにしました。
「最初は『もったいない』と思ったけれど、気持ちの余裕ができたことで、夫婦仲も穏やかになりました。家に“戻る時間”が好きになれたのは久しぶりです」と美沙さんは語ります。
マイホームの購入は、多くの家庭にとって人生最大の買い物です。しかし、“買った瞬間がゴール”ではなく、“そこからどう暮らしていくか”が本当のスタートになります。
ローン控除や低金利といった制度面の安心感だけでなく、働き方・家族の時間・将来設計をトータルで考えることが大切です。理想の家を手に入れても、心の余裕を失えば、本末転倒になりかねません。
「家族で過ごす時間が、いちばんの資産」——そんな当たり前の言葉が、今の時代ほど重く響くことはないのかもしれません。
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