暮らすようにヨーロッパを旅したい…シニア夫婦の夢
「もう少し余裕のある老後だと思っていました」
そう話すのは、首都圏在住のAさん(仮名・65歳)です。大学卒業後、40年以上にわたり同じ業界で働き続け、65歳で完全にリタイア。その時点での金融資産は約3,000万円でした。
住宅ローンは完済。子どもはすでに独立し、現在は夫婦2人暮らし。「老後資金としては悪くない数字」です。それでもAさんの表情はどこか複雑でした。
現役時代、Aさん夫妻はほとんど旅行らしい旅行をしてきませんでした。休みは限られ、年に1度、1泊2日の国内旅行に行くのがせいぜい。「老後になったら時間を気にせず海外を回りたい」そんな思いを長年胸に抱いてきたといいます。
なかでも一番の憧れは、ヨーロッパ。ツアーの慌ただしい旅ではなく、ロンドンやパリの美術館を巡り、街を歩き、カフェで過ごす。2週間ほどかけて、暮らすようにゆっくり滞在する計画でした。ところが、具体的に費用を調べ始めた瞬間、Aさんは現実に引き戻されます。
「優雅な旅行」のはずが…思わぬ現実
エコノミークラスでの移動が1人あたり約25万~35万円、中級ホテルで1泊3万~5万円 ×14泊、現地での食事・交通・観光費が1日2万円前後、その他、都市間の移動費や保険、おみやげなどで、さらなる費用がかかります。
「特にロンドンが高い、高すぎです(笑)。結局、2週間は諦めて10日にしました」
現地では外食の価格に驚き、スーパーでパンやハムを買い、それを“お弁当”に公園で食べる日もあったといいます。とはいえ、念願の旅行です。後悔の残らないよう、決して贅沢はせず、かといって節約しすぎず過ごした結果、最終的にかかったトータルの旅費は160万円だったといいます。
「行ってよかった。それは間違いないです。ただ、ずっと頭の片隅に“いくら使ってるんだろう”ってありました。贅沢旅行なんて夢のまた夢。3,000万円あるから払えるという問題じゃない。昔はここまでじゃなかったはずでしょう?」
一生の思い出にはなった。けれど「老後はもっと余裕のある旅行ができる」と思っていた――思い描いていた“老後の余裕”は、物価も為替も今とは違う時代の感覚だったのです。
