(※写真はイメージです/PIXTA)

離れて暮らしている高齢の親。電話では元気そうでも、実際に家を訪ねると生活の破綻や孤立の兆しが一目で分かる——そんなケースは珍しくありません。本記事では、仕送りのやり取りを続けてきた79歳の母に違和感を覚え、54歳の息子が“アポなし帰省”で目の当たりにした現実と、そこからの立て直しの過程を見ていきます。

立て直しの第一歩は「見える化」と「同席」

広志さんはその場で母に提案しました。

 

●通帳・クレカの“固定費”見える化

 

引き落とし一覧を紙に書き出し、必要・不要・保留を色分け。契約番号と連絡先も控えます。

 

●解約・停止は“電話同席”

 

母一人での解約は不安が残るため、スピーカーフォンで同席。相手の所属・氏名・日時・要点をメモし、後日文書でも確認を取ります。特に定期購入は「初回割引の継続条件」「解約の締切日」「手数料」の確認が要点です。訪問販売や電話勧誘についてはクーリング・オフの可否と書面の有無を必ず確認します。

 

●電話対策

 

番号非通知は受けない設定、迷惑電話防止機能の利用、留守電の活用。固定電話に録音案内を流すだけでも勧誘は激減します。

 

●生活動線の安全化

 

通路の確保、段差の養生、寝室とトイレの動線整備。ゴミ出しは広志さんが“初回同行”して勝手を把握。買い物はネットスーパー+定期便を活用しつつ、栄養バランスの取れるセットを選びます。

 

同時に、制度の土台を整えます。

 

●地域包括支援センター

 

高齢者の総合相談窓口。心身の状態に応じて要介護・要支援認定の申請、ケアマネジャーの選定、訪問介護(生活援助・見守り)などにつなげます。まずは現状をそのまま伝えることが近道です。

 

●消費生活センター(消費者ホットライン「188」)

 

定期購入や訪問販売、リース契約の適法性や解約の可否、クーリング・オフの適用などを相談。文書の読み解きを手伝ってくれます。

 

●警察相談専用窓口(#9110)

 

心当たりのない請求や振り込め詐欺まがいの電話が続く場合は早めに相談。通話内容のメモは重要な手掛かりになります。

 

●任意後見・見守り契約

 

判断力がしっかりしているうちに、将来の財産管理の“代理人”を決めておく選択肢。銀行の代理人カードや口座のオンライン閲覧権限だけでも見守り精度が上がります。

 

解約の電話を何本も終えた夕方、母はぽつりと言いました。

 

「誰も来ないと思ってたから、片づける理由もなかったの。ごめんね」

 

広志さんは返します。

 

「謝ることじゃないよ。次は“来る理由”を作ろう。日曜の昼は一緒にスーパー、月末は家計チェック。電話は夜の7時固定。ね?」

 

決めた約束はカレンダーに書き入れ、スマホにもアラームを入れました。母は少し照れながらうなずきます。

 

「楽しみがあると、頑張れるわね」

 

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