(※写真はイメージです/PIXTA)

株式投資の世界では毎日の株価変動に一喜一憂し、ときに損切りのために「狼狽売り」をする人も少なくありません。一方、株式の売買で短期的な儲けを狙うのではなく、長期にわたって戦略的な投資を行うことにはどんなメリットがあるのでしょうか。本記事では、ファンドマネージャーの奥野一成氏が、オーナー型株式投資のリターンの源泉である「企業の稼ぐ力(EPS)」について解説。多くの投資家が好む配当に関しても触れています。

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保有を続けるオーナーに微笑む「複利の魔法」

では、なぜ多くの人は、長期での複利成長に耐えきれず、短期的な値動きに振り回されてしまうのでしょうか? 理由は単純です。短期的な株価変動は目に見えて分かりやすく、即時的な報酬をもたらすからです。図表4の通り、株価は利益(EPS)の「影」であり、利益(EPS)は事業の経済性の「影」に過ぎません。

たとえ株価の上下に見舞われても、それが本質的な企業価値の変化を正確に反映しているとは限りません。あなたが真に向き合うべきは、「その企業が今後も稼ぎ続ける力を持っているか」という一点だけなのです。

つまり、「時間は複利の最良のパートナー」ということができます。短期的な値動きに踊らされて株を手放すことは、未来の自分が得られるはずだった膨大な果実をみすみす捨てるようなものです。

企業が利益を積み上げ、その利益が再投資される限り、あなたの取り分も年々大きくなります。株式市場は、辛抱強いオーナーに最も大きな報酬を与える場とも言えます。

あなたが眠っている間も、旅行をしている間も、その企業は働き続けながら世の中に価値を提供しています。「複利の魔法」は、諦(あきら)めずに保有し続けたオーナーにだけ微笑むのです。

[図表4]事業の経済性・利益・株価の関係

株式投資の高配当は“副産物”として捉えよう

株式投資において、「配当」を好む投資家は非常に多く見られます。定期的に現金が手元に入ることで安心感が得られるため、その魅力も理解できます。しかし、オーナー型株式投資の観点から見ると、この「配当重視」の姿勢はファイナンス的に正しいとは言えません。

まずは企業価値増大という観点から考えてみましょう。配当とは企業価値の一部を外部に払い出す行為であり、その行為自体は企業価値を増大させないので、その企業価値をオーナーとして保有している投資家にとって、配当は「中立である」とファイナンス理論上言われる所以(ゆえん)です。

たとえて言えば、自らの足を食べる「タコ足食い」のようなものです。むしろ、配当が支払われるたびに、その資金が事業への再投資に回らないことになるので、本来期待される「企業価値の複利的な増大」はその時点で止まってしまうのです。つまり、配当は複利を殺す行為とも言えるのです。

現に、本当に強い経済性と成長機会を有した企業は、あえて無配当を貫いています。アマゾンや、かつて成長期にあった頃のマイクロソフトなどがその代表例です。

配当を出すよりも、自社の高い収益性と将来性を信じて、事業へ再投資したほうが企業価値を高められることを、経営者自身がよく理解しています。裏を返せば、大きな配当を行う企業というのは、自社の中に魅力的な再投資先がもはや存在しない、すなわち成長機会の枯渇を“暗に自白している”とも言えるのです。

次に企業選択という観点から考えてみましょう。「安定的に増配を続けている企業は素晴らしい企業だ」とよく言われますが、これは論理が逆です。正しくは、「素晴らしい経済性を有する企業だからこそ、結果的に高配当を維持できている」という順序です。高い利益を持続的に生み出す力こそが本質であり、配当はその“副産物”にすぎません。

それでも目の前の「現金」が必要なのであれば、その時に自らの保有株式を一部売却すれば済む話です。むしろ配当は、投資家の意思に関係なく利益を外部化させる「強制的な利益確定」であり、長期的な資本の複利運用という視点から見ると非効率な仕組みとも言えます。

本質を見誤ってはいけません。オーナー型株式投資とは、企業の成長に伴走し、その価値の複利的拡大を享受する絶好のポジションにいるのです。目の前の「配当」につられて将来の価値増大を犠牲にするべきではありません。



奥野 一成
投資信託「おおぶね」 ファンドマネージャー
農林中金バリューインベストメンツ株式会社(NVIC)
常務取締役兼最高投資責任者(CIO)

 

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※本連載は、奥野一成氏の著書、『武器としての投資~AI時代を生き抜く資産とキャリアの築き方~』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

武器としての投資

武器としての投資

奥野 一成

KADOKAWA

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