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企業のオーナーの意識を持つ「オーナー型株式投資」
「売買型株式投資」がその売買の対象としている企業の株価は、市場において毎日、毎秒大きく揺れ動くものです。しかし、その企業の「価値」は実際にその企業が「稼ぐ力」によって変わるものなので、本来的には市場での株価変動に応じて揺れ動いたりするものではありません。
「オーナー型株式投資」とは、その企業の「稼ぐ力」を株主(=オーナー)として保有するという考え方です。法的な見地でも、株式を保有するということは、その企業の残余利益に対する持ち分を持つということなので、企業の「オーナー」の1人になることに他なりません。したがって、株式投資という言葉には「オーナー」という意味が元々含まれているので、「オーナー型株式投資」という言葉自体、本来は重複表現になります。
しかし、あえてこの言葉を使う理由は明白です。株式投資をする人のほとんどが、自分が企業のオーナーであるという意識を持っていないのが現実に基づきます。
多くの投資家にとって、株式とは単なる「売買する対象」であり、画面上で価格が上下する「数字」に過ぎません。しかし株式を保有するということは、本質的にはその企業の一部を所有し、その価値の増大を享受する立場にあることを意味します。
ディズニー社の株式を所有しているなら、ミッキーマウスがオーナーであるあなたのために、あなたが寝ている間も世界のどこかのディズニーランドでパフォーマンスを続け、ゲストを魅了してくれているということなのです。
もし、あなたがこの事実を実感できないとすれば、それは単なる売買型株式投資の発想にとらわれている可能性があります。その場合は、本記事で紹介する医療機器メーカーに勤める35歳のビジネスパーソンA氏の1週間をストーリーとして振り返り、オーナー型株式投資家とはどういうものなのか体感してみてください。
オーナー型株式投資家A氏の1週間
さまざまな視点で情報のアンテナを張る月曜日
月曜の朝、A氏はいつも通り6時に目覚める。朝食を家族と取りながら、軽く息子の幼稚園の話を聞き、その後、その日のスケジュールを確認する。電車通勤中には経済ニュースをチェックし、気になる企業の決算発表があるかを確認。ここで新たな投資先を探そうとはしない。むしろ、自分が投資している企業の戦略や収益性が長期的にどう変化するかに関心を寄せる。
職場では中期経営計画策定プロジェクトの一員として、午前中から企画案の検討に忙しい。A氏は、新NISAのつみたて投資枠を活用して、以前から積立投資しているアクティブファンドの投資先の中から面白いと思っている米国動物医薬メーカー「Zoetis」に対して、新NISAの成長投資枠で個別に投資を行っている。その投資分析を通じて得た視点が、現在の業務に役立っていると日々感じている。「医療機器業界でも動物医療市場は大きな可能性を秘めている」と企画会議で提案すると、上司からも好感触を得た。
夜は家族とゆっくり夕食を取り、息子と遊んでからリビングで読書。『銃・病原菌・鉄』(ジャレド・ダイアモンド著、倉骨彰訳、草思社文庫)を読み進めながら、歴史から経済の潮流を捉える面白さに思いを馳(は)せる。23時前には就寝するのが習慣だ。
これまでの経験が自身の資産だと実感する火曜日
この日もプロジェクトの会議が続く。A氏は、自分が投資家として身につけた「企業価値を長期的視点で考える力」が、会議での発言に深みを与えていると感じている。「事業別競争優位性を軸にした、中期計画の目標設定をもっとリアルな数字に落とし込めないか」との発言が、同僚たちに好評だった。
昼休み、経済ニュースを眺めていると、Zoetisの競合企業が新製品を発表したとの記事を見つける。早速、週末にレポートを読む計画を立てる。A氏は常に「投資家の視点で情報を整理する」習慣を持つが、それはあくまで仕事を終えてからのことだ。
夜は久しぶりに営業部門に在籍していた時代の取引先と会食。「あの頃は現場に出ていたおかげで、製品が顧客にどう受け止められているかを実感できた」と昔話に花を咲かせる。その時は辛(つら)いことも多かったが、過去に一緒に働いた方々との繫(つな)が重要な自分の資産だと思えるようになった。
