前回は、通常のウォーキングよりもひざへの負担が軽いトレーニングをご紹介しました。今回は、ひざの痛みの改善に有効な「サイクリング」の行い方を見ていきます。

足腰の負担を抑え、有酸素運動が可能なサイクリング

●サイクリング

 

自転車は、足腰への負担を抑えて長時間の有酸素運動ができる点が大きなメリットです。また、太ももの前面の筋肉が短時間で効率的に鍛えられます。

 

歩くと足が痛む場合でも、自転車ならサドルで上半身の体重を支えながらひざを動かすことができるので楽になります。最初は無理せず短時間のポタリング(目的を決めず、気の向くままに自転車を走らせること)から始めてみましょう。

 

走り始める前に、サドルの高さを調整することも大切です。ペダルが一番低いところにきた時にひざが軽く曲がっているのが、最も適切な高さです。

 

なお、自転車で走り慣れていない人は、30分もすると太ももやふくらはぎがつらくなってくるかもしれません。その時は無理をせず途中で休憩し、同時に水分補給も忘れないようにしましょう。

運動の種類よりも、継続が重要に

運動療法は全ての変形性膝関節症診療ガイドラインでA評価を受けています。痛みを取る効果もNSAIDsとぼ同等であると言われており、当然副作用もありません。

 

それでは、どの運動が変形性膝関節症に有効なのでしょうか。ロディ先生らは変形性関節症に対して有酸素運動と筋力訓練のどちらが効果的かを検討した結果、両運動とも痛み、機能障害を改善していましたが、両者に有意差はありませんでした。ストレッチなどの柔軟性運動、筋力訓練、ウォーキングなどの有酸素運動、これらを組み合わせることで変形性膝関節症の痛みや機能障害を改善させる効果が高くなることが分かっています。

 

また、田中先生らは荷重下筋力訓練、非荷重下筋力訓練、有酸素運動の有効性をメタアナリシスで検討しました。結果は全ての運動療法で変形性膝関節症の痛みを改善していましたが、一番効果的であったのは非荷重筋力訓練でした。

 

2013年には、オスマン先生らが下肢変形性関節症に対する運動療法の効果をメタアナリシスで検討し、BMJに発表しました。8218人、12種類のエクササイズ(柔軟運動、筋力トレーニング、有酸素運動、上記の組み合わせ。水中での柔軟、筋力トレーニング、有酸素運動、上記の組み合わせ)について検討した結果、地上での柔軟運動、筋力トレーニング、有酸素運動の組み合わせが痛みの改善、機能の改善ともに一番効果的でした。同様に、水中での筋力トレーニングと有酸素運動の組み合わせも高い効果を示しました。

 

運動療法の有効性は、ほとんどの論文で高い評価を得ていますが、問題はその継続性です。先ほど紹介した田中先生らの研究では、筋力トレーニングは週4回以上9週間続けることが効果発現に必要だとしています。

 

運動を効果的に続けるには、モチベーションを維持して継続すると同時に、適切な指導により正しい方法で行う必要があります。理学療法士が在籍する整形外科クリニックや通所リハビリテーション施設、健康運動指導士が運動指導してくれるデイサービスやフィットネスクラブがありますので、うまく利用してみてください。

 

また、アメリカでは、インターネットを利用したプログラムが充実しています。ウィリアムズ先生らの研究では、インターネットを使ったエクササイズ・トレーニングも、理学療法士の指導する理学療法と同様に有効であったと報告しています。

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    本連載は、2016年6月29日刊行の書籍『その痛みやこわばり、放っておくと危険! ひざに「! 」を感じたら読む本』から抜粋したものです。記載内容は予防医学の観点からの見解、研究の報告であり、治療法などの効能効果や安全性を保証するものではございません。

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    橋本 三四郎

    幻冬舎メディアコンサルティング

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