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株価変動に執着しがちの「売買型株式投資」
典型的な「売買型株式投資家」であるW氏。多くの方が一般的に認識している株式投資とはこのW氏のスタイルではないでしょうか? 以下にW氏の株式投資スタイルの特徴をまとめてみました。
1:市場売買ノウハウの獲得・売買情報の入手に集中
W氏の投資スタイルは、「株価変動の材料があるか」に焦点を当てるものです。SNSインフルエンサーの推奨、需給、チャート、政治的な材料を重視し、企業の事業そのものはそのうちの一つにすぎません。市場の動きを予測し、タイミングよく売買を行うことで利益を上げる技術を磨くことが、投資で成功するための鍵だと考えています。
そして、そのために情報収集の時間を確保し、インフルエンサーの意見をチェックし、売買の精度を高める努力を続けています。投資サロンに月1万円も支払ってしまうことは、W氏だけに見られる行動ではありません。
この姿勢は決して否定されるものではありません。売買のスキルを磨き、需給の変化を読む力を養うことも、投資の一つの道です。しかし、問題はこの、「売買ノウハウ」がビジネスパーソンとして働いていることと無関係であるがゆえに、日常の限られた時間の中でバランスをとることが難しくなっている点です。
W氏はビジネスパーソンとして仕事にも真剣に取り組んでいますが、市場が動く時間帯には株価が気になり、SNSや証券アプリをチェックする時間が増えます。さらに、夜には米国市場を確認し、オンラインサロンでの情報交換にも時間を割くため、睡眠時間が削られてしまうことで、結果的に翌日の仕事の生産性を下げる可能性があります。
確かに投資の技術を高めるには、多少なりとも時間を投じる必要があります。しかし、24時間という限られた時間の中で、仕事、投資、プライベートのどこに重点を置くかは常に難しい問題ですし、だからこそしっかり考える必要があります。売買のスキルを磨くことに集中すればするほど、仕事やプライベートに対する意識が希薄になり、また仕事をおろそかにしないためには投資のための時間を削る必要が出てきます。
W氏はそのバランスに悩みながらも、どちらにも全力を注ぎたいと考えています。しかしながら、1人の人間が持つ時間には限りがあります。この現実にどう向き合うのかは、投資のスタイルを決める上で避けて通れない問いなのかもしれません。
2:投資とは「利食い」と「損切り」をうまくやること
W氏にとって、投資とは「安く買って高く売る」ことで利益を得る行為です。これはPL(損益計算書)的な発想に基づいた考え方であり、「売却時にいくらの利益が確定したか」が投資成果の基準となります。そのため、「利食い」と「損切り」を適切に行うことが重視され、投資は自分の簿価との戦いであると考えられがちです。
この発想においては、含み益ももちろん意識されますが、最終的なリターンは売却して初めて確定するという考え方が根底にあります。株価が簿価を下回ると、売却せずに保有を続ける「塩漬け」という状態になり、長期保有は当初の想定とは異なる選択肢として受け止められることもあります。こうした投資行動は短期的な市場の変動に強く依存し、売買のタイミングが投資の成否を決定づけるものとなるため、日々の相場の動向チェックや情報収集が欠かせません。
3:人間としての自然な欲望
売買型株式投資には、人間の本能に訴えかける魅力があります。市場の変動を読み、売買のタイミングを見極め、予想が当たれば大きな快感を得る。これは、まさに「ゲーム」に似たスリルを提供します。W氏をはじめとする売買型株式投資家にとって、成功したときの高揚感は何物にも代えがたいものであり、その瞬間こそが投資の醍醐味(だいごみ)だと感じる人も多いでしょう。
この感覚は、脳内で分泌されるアドレナリンやドーパミンといったホルモンによるものです。予測が当たったときの興奮、短期間で利益を確定させたときの達成感は、まるでスポーツやギャンブルのような刺激をもたらします。
自ら投資ノウハウを磨いて、(それが原因でないまでも)うまくいった時の高揚感は、退屈な人生の中で潤いを与えてくれる――人生というものは生理学的に考えれば快楽ホルモンであるドーパミンや幸福ホルモンセロトニンを手に入れるゲームそのものである、そのような考え方もあるかもしれません。
