「孤立」と「疲れ」――まさかの決断
さらに冬になると、雪かきや凍結防止の対策に追われる日々。人と会話する機会も減り、家の中は静寂に包まれていました。
「近所の人は優しいけど、みんな年上でね。話題が合わないというか、どこか孤独だった」
移住からちょうど2年が経った頃、健一さんはある日ぽつりと真理子さんに言いました。
「東京に戻らないか?」
その一言に、妻は目を丸くしましたが、すぐにうなずいたそうです。
「私も、もう限界だったのかもしれない」
こうして、夢だった“畑のある暮らし”は静かに幕を閉じました。
現在、二人は都内の賃貸マンションに戻り、年金暮らしをしています。移住生活を後悔しているかと聞くと、健一さんはこう答えました。
「後悔はしていませんよ。ただ“夢”のままで終わらせておいた方が、きれいだったかもしれないですね」
地方移住に対する自治体の支援制度は拡充されていますが、それを「どう活かすか」「どこまで覚悟をもって挑むか」は、個々の状況次第です。
自然に囲まれた生活は魅力的ですが、そこには都市部とは異なる“別の辛さ”も存在します。移住を検討する際は、理想だけでなく「体力・医療・老後の孤独」まで含めて見据えることが大切です。
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