残りの人生をどう生きるか──50歳のターニングポイント
50代に差し掛かるころ、それまで遠くにあった「残りの人生」を考える機会が増えます。元会社員のAさん(68歳)も、振り返れば50歳が大きな転機だったといいます。
「定年まであと10年、その後5年は継続雇用で65歳でリタイア。そのとき自分に何が残っているのか、と考えたのが、ちょうど50歳のときでした」
大学卒業後、Aさんはメーカーの営業職に就職。数字と顧客に追われる日々を送りました。
「営業は成果がすべて。残業も休日出勤も当たり前。でもやりがいがあり、頑張れば昇給もありました。仕事=自分の存在意義だと思っていたところがあります」
その一方で、家族との時間は減少。子育ては妻に任せっきりになっていました。同期には子ども優先の人もいましたが、やはり会社での評価に反映されていたといいます。
「正直“男なら仕事だろ”と思っていました。でも、自分は娘の友達の名前ひとつ知らない。家庭のことはほとんど妻任せで、私は『お金を運ぶだけの人』になっていた。それでいいのか――50歳で、ハッとそう気づいたんです。」
さらに、転職が当たり前の時代において、誰がいなくなっても会社は回るという現実も痛感していました。
考えるほどに「このまま65歳まで働き、老後に突入する人生で終わりたくない」と考えるようになったというAさん。妻と真剣に話し合った結果、60歳で完全リタイアを目標に。50歳からの10年間で、その実現に向かって準備しようと決めたのです。
