「今月も払えなかった」滞納3ヵ月目の朝
「あと1週間、待ってもらえませんかって、大家さんに頭を下げました」
そう語るのは、都内に住む76歳の佐伯智子さん(仮名)。築40年のアパートで、一人暮らしをしています。
毎月の家賃は4万8,000円。特別高いわけではありませんが、智子さんの月収入は、国民年金と遺族年金を合わせても月10万円ちょうど。家賃を払うと、残るのは5万円ほどです。
「食費と電気代を切り詰めても、病院代がかかる月はどうにもならなくて。3ヵ月目の滞納になったとき、大家さんに“今後の見通しが立たないなら出て行ってほしい”って言われたんです」
智子さんは、夫を5年前に亡くし、その後はずっとこのアパートで一人暮らしを続けてきました。高齢者の一人暮らしが増える中、家主にとっても「滞納リスク」や「孤独死リスク」は大きな懸念となっています。
「大家さんが冷たいとかじゃないんです。“苦労されているのはわかるけど、貸している側にも事情がある”って言われて。わかります、私だって“また払えないかも”って思いながら住んでいるのが苦しくて」
相談できる身内もなく、貯金も数万円。スーパーの値引きシールと、クーラーの電源を入れるかどうかに毎日悩む生活に、智子さんは「もう限界だった」と語ります。
そんな中で彼女が選んだのは、生活保護の申請でした。
「本当は、ずっと抵抗がありました。“国の世話にはならない”って、夫が生前よく言っていて。でも、もう自分ひとりでは暮らしていけないってわかって…役所に連絡したんです」
申請のきっかけになったのは、区役所の地域包括支援センターに「家賃が払えなくて困っている」と電話したこと。そこからケースワーカーが面談に来て、制度の説明を受けました。
「“生活保護を受けても、家を追い出されるわけではありません”って言われたのが救いでした。知らなかったんです。そんな制度があることすら」
