経済的には“損”でも、精神的には“限界”
夫婦は今も離婚はしていませんが、完全に別居状態です。生活費の仕送りや連絡も最低限。
「家計は完全に分けているし、年金の年金分割もしていない。離婚届を出したわけではないけれど、“気持ち的には婚姻関係が終わった”って感覚ですね」
家賃や光熱費などを考えれば、別々に暮らすのは非効率で、家計的には明らかに損です。
「でも、あの人にとっては“経済より精神的な限界”だったのかもって、今なら思います。私も、“同じ空間にいるストレス”を感じていたから…」
一方で、「離婚はしないが、心は離れている」——そんな“サイレント別居”の熟年夫婦も増えています。経済的な理由などから同居を続けながら、互いに関心を失ったまま暮らすケースです。
その背景には、
●年金や持ち家を維持するため「法律上の婚姻は継続」したまま
●精神的な距離や生活リズムのズレによる“穏やかな断絶”
●年金分割や財産分与を回避・先送りしたい心理
などがあると指摘されています。
さらに、単身高齢者の住宅問題も深刻で、高齢男性の単身入居には保証人や収入証明のハードルも。今回のように「旧勤務先の社宅」や「実家の空き家」など、“家賃ゼロor格安”の選択肢があることでようやく実現できているケースも多いのです。
現在、美津子さんは月13万円の厚生年金で生活しています。食費・光熱費・管理費・医療費などを差し引くと、「旅行」や「趣味」に使える余裕はほとんどありません。
「一人暮らしも楽じゃないけど、気を遣わずに過ごせるのは正直ラクです。もしあの人が“帰りたい”って言ってきたら……うーん、“月に一度なら来てもいいかな”って思うかもしれませんね」
ふたりきりの老後。理想は“寄り添って穏やかに”かもしれませんが、現実には“無理なく暮らせる距離”を模索する人も増えています。
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