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エビ銀からの宿題
土曜日の朝、2人は宿題のことを思い出した。コピー用紙を取り出して、姫奈は思いつくままにシャーペンを走らせる。
〈趣味〉
・ダイエット
・カラオケ
・旅行
〈興味のあること〉
・家を買うこと
〈得意分野〉
・事務処理(仕事)
「こんなんで良いのかな? こういっちゃなんだけど、自慢できるような趣味も特技も仕事もないんだけど……」
姫奈のメモを横目に、信二は自分の分をノートパソコンに打ち込んだ。
〈趣味〉
・映画
・ジョギング
・酒
〈興味のあること〉
・家を買うこと
〈得意分野〉
・火力発電プラント(仕事)
「僕もダメだね。普通すぎる。部活をずっと続けるとか、何か変わった楽器を練習するとか、もっと、自分を差別化しとけば良かった」
平凡すぎる生活が、平凡すぎる自分を作り上げてしまう。信二はこれまでのつまらない生き方を思い出して落ちこんだ。
「しょうがないじゃない。これが私たちなんだから」
あまりにも月並みな僕たちに、エビ銀さんはなぜ、株を教えてくれる気になったのか? 信二は少し不安になった。
「本当に銀さんとかサラさんって、有名なのかな? ネットで調べてみようよ」
検索してみると、確かに、エビ銀、サラ柴の名前がいくつも出てくる。ただ、伝説の投資家としての逸話めいた話や古い雑誌の対談記事など、出てくるのはすべて10年以上前のもので、最近の様子はわからない。
「第一線からは引いているみたいだね」
「そうでしょうね。きっと、すっかり大金持ちになって、ゆっくり趣味でも楽しんでるんでしょ? それで、暇なもんだから、たまたまやってきた私たちを見て、思い付きで投資のことを教えようって気になったんじゃない?」
「そうかな? あの店にいたのは、実は偽物のエビ銀とサラ柴だったりして。詐欺師は他人になりきって、本当にうまく騙すらしいからね」
見ず知らずの人が、いきなり儲け話を親切に教えてくれるなんて、まともに信じてはいけない。当然の心配である。
「そんなこと絶対にないわ。たまたま立ち寄る素人を騙すために、あんなところにあんな立派な店を構えるはずないじゃん。どう考えても桁違いの大富豪よ」
確かに、素人から小銭を騙し取るレベルの詐欺師にしては大仕掛けすぎる。
