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「お金持ちになりたい」覚悟を決めた若き夫婦
2人は、彼らの武勇伝に釘付けだった。いったいどのくらい資金力があれば、そんな大勝負が打てるのだろう。庶民では想像もつかない大金を動かしていることだけは間違いない。
「僕たちも皆さんのような大金持ちになりたいです」
信二がつい漏らした言葉をエビ銀は聞き逃さなかった。
「なれるさ」
迷いのない言葉に信二は嬉しくなった。
「オレもサラちゃんも貧乏のドン底からここまで這い上がってきたんだ。真剣に、そして合理的に、株式投資に取り組むなら、きっと想像もできないほど、大金持ちになれるよ」
この人たちと一緒なら本当に夢は叶うかもしれない。信二は未来が明るく輝くのを感じた。結局、この日はずいぶん飲んで騒いで、夜の9時にお開きとなった。
別れ際、エビ銀は2人に宿題を出した。
「来週の日曜日にまたおいで。その時までに、君たちの趣味や興味のあること、あるいは得意分野を紙に書き出して教えてくれないか?」
「はーい。宿題ですね」
「わかりました。自己紹介ファイルを用意して戻ってきます」2人は上機嫌で返事する。
「それから、もし、君たちの知っている会社で、今後伸びそうな会社があったら、それも考えて来るように。そういう具体例があったほうが説明しやすいんだ」
姫奈は酔っぱらった勢いもあって、半分冗談で反応した。
「そんなまどろっこしいのじゃなくて、銀さんなら、上がる株なんて、すぐわかるんでしょ? それを教えてもらえると嬉しいんですけど……」
この言葉には、珍しくエビ銀が怒りを露わにした。
「みんな、上がる株を教えてもらおうとする。それが間違いの始まりさ。悪い奴は上がる株ではなく、もう上がらない株を教えたがる。自分が買った株を高値で売りつけるためにね。そんなことも知らずに、ありがたがって、カネまで払って、クズ情報を手にする浅はかな連中が多すぎる。もし、君もそうなりたいんだったら、教える気はない。もう二度と来ないでくれ」
これまでと打って変わって、眼光が険しくなり、声には重みがある。数々の修羅場をくぐり抜けたエビ銀の本性が垣間見えた。
それでも、凍りつく2人の顔を見ると、元の表情に戻って、おどけて言った。
「もっとも、そうじゃなくって、投資のノウハウや実力を身につけたいというなら、このエビ銀様の弟子として、株の勝ち方を教えてさしあげましょう」
2人はほっとして、頭をぺこりと下げた。
