「面倒みるよ」に救われたはずが――同居4ヵ月で変わった息子
「面倒みるよ、と。息子がそう言ってくれたときは、本当に救われた気がしたんです」
そう話すのは、地方都市で一人暮らしをしていた光子さん(仮名・83歳)です。
光子さんは夫に先立たれ、持ち家で一人暮らしを続けていました。年金収入は月約13万円。ぜいたくはできませんが、固定資産税や光熱費を払いながら、何とか慎ましく暮らしていたといいます。
転機は、自宅での転倒でした。骨折には至らなかったものの、買い物や通院が以前のようにはいかなくなり、不安が強くなりました。そんなとき、近県で一人暮らしをしていた57歳の長男・浩司さん(仮名)がこう言ったのです。
「こっちで面倒みるよ。もう一人で頑張らなくていいから」
光子さんは自宅を処分せずに残したまま、息子の住む賃貸マンションへ移ることにしました。
「迷いはありました。でも、何かあったときに一人なのは怖かったんです」
最初のうちは、浩司さんもよく動いてくれました。スーパーへの付き添い、病院への送迎、重い荷物の持ち運び。光子さんも「来てよかった」と思っていたといいます。
ただ、同居から数ヵ月がたつと、少しずつ空気が変わり始めました。
浩司さんは非正規の仕事をしていましたが、勤務日数は安定せず、収入にも波がありました。家賃や光熱費の負担が重いとこぼすことが増え、光子さんに対しても「生活費としてもっと入れてほしい」と口にするようになったのです。
「最初は月3万円くらいを渡していたんです。でも、そのうち“5万円は必要だ”“食費も上がってる”と言われるようになりました」
光子さんは、息子に世話になっている以上、ある程度の負担は当然だと思っていました。しかし、要求はそれで終わりませんでした。
「年金が入ったら教えて」
「通帳はこっちで管理したほうが早い」
4ヵ月後には、キャッシュカードを預けるよう求められたといいます。
「俺だって生活があるんだよ」
「面倒みるって、タダじゃできないだろ」
それまでの「心配しなくていいよ」という口調は消え、年金の振込日が近づくたびに家の空気が張りつめたといいます。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要』によると、65歳以上の単身無職世帯の可処分所得は11万8,465円、消費支出は14万8,445円で、平均的にも支出が収入を上回っています。年金月13万円の一人暮らしは、もともと余裕のある水準とは言えません。そこから数万円単位で家計を差し出し続ければ、たちまち暮らしは苦しくなります。
「私は面倒をみてもらう側のつもりだったのに、いつの間にか息子の生活を支える側になっていました」
