「高市円安」から一転、円高反発──政局混迷と株安で波乱の週末、149〜153円レンジ予想【国際金融アナリストが解説】

10月14日~10月21日の「FX投資戦略」ポイント

「高市円安」から一転、円高反発──政局混迷と株安で波乱の週末、149〜153円レンジ予想【国際金融アナリストが解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

先週の米ドル/円は、高市自民党新総裁誕生の影響で、一時153円台まで一段高となりました。今週は円安再燃か、それとも円高に向かうのか。マネックス証券チーフFXコンサルタント・吉田恒氏が、株価の動きに注目しながら、今週の市場展開について解説します。

今週の注目点=波乱含みの日本の政局、米中対立再燃も要注意

<「株高=円安」関係に注目=株価には「上がり過ぎ」シグナルも>

以上見てきたように、大荒れの展開となった先週でしたが、では今週は円安が再燃するのか、それとも円高に向かうのか。それを考える上では、とくに株価の動きに注目してみたいと思います。

 

積極財政かつ利上げ慎重派と見られた高市新総裁誕生を好感したとしていったん急騰した日経平均株価でした。ところが、これを受けて90日MA(移動平均線)かい離率は一時15%以上に拡大、かなり短期的な「上がり過ぎ」懸念が強くなっていました[図表5]。今週以降はいよいよ新総理決定が注目され、高市新総理誕生となるか、それ以外のシナリオとなるか、自公連立与党解消によりまったく読みづらい状況となりましたが、株価の「上がり過ぎ」を考えるとさらなる上昇は限られ、むしろ反動から大きく下落するリスクもあるのではないでしょうか。

 

出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
[図表5]日経平均の90日MAかい離率(2000年~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

 

米国株についても、ナスダック総合指数の90日MAかい離率は日経平均ほどではないものの相応に短期的な「上がり過ぎ」懸念が強まっています。そしてそんなナスダック指数は、NYダウに対する相対株価が、2000年のITバブル以上に割高が拡大する状況が続いています[図表6]。こういった状況は、長引く政府機能一部停止「シャットダウン」や米中対立激化といった悪材料に反応、株安が広がるリスクを示唆しているのではないでしょうか。

 

出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
[図表6]NYダウに対するナスダック総合指数の相対株価(1990年~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

 

<今週の米ドル/円は149~153円で予想>

これまで見てきたように、最近にかけての円安はユーロ/円などクロス円で顕著なように、金利差から大きくかい離し、最高値更新の株価に連動してきたように見えました。この関係を前提にするなら、いくつかの株価「上がり過ぎ」シグナルの示唆は、さらなる「株高=円安」は限られ、「上がり過ぎ」の反動で株安が拡大する場合は円高に向かう可能性もあるということになるのではないでしょうか。

 

以上を踏まえると、今週の米ドル/円は先週の高値を大きく超える可能性は低く、株安次第では円高に向かう可能性もあるとの考え方から、149~153.5円で予想したいと思います。

 

<円売り仕掛けへの対抗手段、円買い介入は難しそう>

ただそういった予想に反しまだ円安が続いた場合、マーケットの円売り仕掛けに対して、通貨当局が米ドル売り・円買い介入などの対抗手段はまだまだ難しそうなので、最後にそれについても確認したいと思います。

 

2022、2024年に断続的に行われた円買い介入は、マーケットが円売りに大きく傾斜した局面でのことでした[図表7]。強力な円買い介入により、マーケットの円買い戻しを促すことが円高への反転を成功させた一因だったでしょう。ところが、足下のマーケットは一部のデータでは逆に円買いで含み損を抱えている可能性があります。そういった中での円買い介入は、円売り戻しに吸収され、円高への反転にはつながらない懸念があるでしょう。

 

出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
[図表7]CFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年1月~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

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