M&Aで欠かせない「ビジネスDD」とは?
企業の買収や合併(M&A)において、対象となる事業の価値や将来性を評価するプロセスを「ビジネス・デュー・ディリジェンス(Business Due Diligence)」と呼びます。
直訳すると「事業に対する十分な調査」という意味で、買収候補となる事業が実際に利益を上げられるのか、事業計画は現実的か、そして統合によってどの程度の効果が見込めるかを総合的に評価する作業です。
ビジネス・デュー・ディリジェンス(以下、ビジネスDD)は、単に数字を確認する作業にとどまりません。市場環境の変化や競合他社の動向を把握することで、買収後に発生しうるリスクを事前に見極めることができます。
また、対象事業を単独で運営した場合の将来性と、自社と統合して得られる「シナジー効果(相乗効果)」の両面から分析するのが基本です。シナジー効果とは、企業同士の連携によって1+1が2以上の価値を生み出すことを意味します。たとえば、販売ルートや生産設備、人材ノウハウを共有することで、単独では得られない利益を創出できるのです。
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ビジネスDDの「3つ」の目的
ビジネスDDには、大きく分けて3つの目的があります。
1.事業計画の妥当性確認
ビジネスDDではまず、対象事業の売上高や利益、コスト構造を確認します。具体的には、売上高から売上原価、販売費・一般管理費を差し引いた営業利益の推移や構造を分析し、事業計画が現実的かどうかを評価します。
この分析によって、過大評価や過小評価がされていないか、経営陣の計画に偏りがないかを確認することができます。
2.適切な買収価格の算定
ビジネスDDの結果は、買収価格を決定する重要な材料になります。単独で事業を運営した場合の価値と、自社との統合で生まれるシナジー効果を比較・評価することで、適切な価格を導き出します。
ここでの誤算は、買収後の利益計画の大幅なズレにつながるため、慎重な分析が求められます。
3.買収後の事業戦略策定
対象事業の強みや課題、市場の将来性を理解することで、買収後の経営戦略を立案できます。たとえば、製品ラインの統合や新市場への進出、コスト削減施策の検討など、具体的な戦略策定に役立つ情報を得ることができます。
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