(※画像はイメージです/PIXTA)

アジア太平洋(APAC)地域における金保有量は、主要市場に共通する経済的・構造的要因によって増加傾向にあります。堅調な投資家需要は、インドや中国などの国々における文化的親和性によって拍車がかかり、信頼できる価値保存手段としての金の役割を確固たるものにしており、金の継続的な強気モメンタムの主要な原動力となり続けています。本記事は、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントの3名のストラテジストが共同執筆し、アジア太平洋地域の金市場動向を詳しく解説します。

金投資商品の普及拡大

APAC地域では金ETFの人気上昇に加えて、他の金投資商品も一部の市場、特に日本やタイで注目を集めるようになっています。

 

日本では、2020年から2024年までの経済環境が金の需要動向を形成する上で重要な役割を果たしました。持続的な円安、2022年以降の国内インフレ率の加速、前例のない地政学的リスクを背景に、家計はこれらのリスクをヘッジできる伝統的な資産に逃避先を求めました。

 

金の小売価格はこの期間に急騰し、過去最高値を幾度となく更新しました。2024年初頭までに、円建て金価格は1グラムあたり10,000円超えの史上最高値に達しました。これにより、金への関心がさらに喚起されたと考えられます。

 

この期間に個人投資家の間で金投資信託と金ETFの人気が高まったのは確かです。これは、これらの投資商品が現物金の保有に比べて、アクセスが簡単で、さほど面倒でない投資手段を提供するという世界的な傾向を反映しています。

 

金投資信託と金ETFへの純資金流入額は、2020年~2023年の年平均4億7,860万米ドルから、2024年には18億9,810万米ドルに急増しました※7。この堅調な増加傾向は2025年に入っても続き、純流入額は上半期だけでも29億7,290万米ドルに達しました。これは2024年通年の約1.6倍に相当する金額です※8。絶対量ベースでも、これらの投資商品に関連する金需要は2020年~2023年の年平均7.8トンから、2024年には22.4トンに急増し、さらに2025年には上半期だけで22.7トンに達しました※9

 

2025年上半期には、新規資金流入額の約83%が金投資信託に向けられ、2024年の約78%から上昇しました。一方、残りの17%は金ETFに流れ、2024年の約22%から低下しました※10

 

日本では、幾つかの構造的・文化的要因から、ETFよりも投資信託の方が引き続き選好されています。長年にわたる存在感と高い知名度が人気の背景となっています。加えて、メガバンクや有名金融機関を通じて広範にアクセスできることも、投資信託の人気を支えています。ただし、若年層やより高度な知識を持つ投資家の間では、コスト効率の良さと取引のしやすさから、ETFに投資する傾向が強まっています。

 

出所:ワールドゴールドカウンシル、ブルームバーグ・ファイナンスL.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント データ期間:2020年1月1日~2025年6月30日 過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。
[図表5]日本の民間部門による金需要
出所:ワールドゴールドカウンシル、ブルームバーグ・ファイナンスL.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント
データ期間:2020年1月1日~2025年6月30日
過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの信頼できる指標ではありません。

 

タイでは、タイ証券取引所に上場する有価証券で、(金ETFを含む)外国上場ETFへの完全投資が可能な預託証券(DR)が導入され、国内投資家の間で人気が高まっています。2024年に導入された複数のDRは世界最大の金ETFへのアクセスを提供しており※11、タイの個人投資家は、規制された手軽な投資手段を通じて金への直接的なエクスポージャーを得ることが可能になっています。

 

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〈注釈〉
※1 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 6/30/2025
※2 World Gold Council and State Street Investment Management, as of 6/30/2025
※3 World Gold Council and State Street Investment Management, as of 6/30/2025
※4 https://www.lbma.org.uk/alchemist/issue-100/lifting-the-lid-on-the-birth-of-the-gold-etf
※5 World Gold Council and State Street Investment Management, as of 6/30/2025
※6 World Gold Council and State Street Investment Management, as of 6/30/2025
※7 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 6/30/2025
※8 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 6/30/2025
※9 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 6/30/2025
※10 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 6/30/2025
※11 The Stock Exchange of Thailand, State Street Investment Management, as of 6/30/2025
※12 World Gold Council, as of 2/19/2025
※13 The 10 insurers include PICC, China life , Taiping Life Insurance, Sinosure, Ping An P&C, Ping An Life Insurance, Pacific Property, Pacific Life Insurance, Taikang Life Insurance, and New China Life Insurance
※14 https://www.policyaddress.gov.hk/2024/en/p29.html
※15 World Gold Council, Gold Market Insights, as of July 2024
※16 World Gold Council, Gold Market Insights, as of July 2024
※17 World Gold Council and State Street Investment Management, Gold Perceptions Survey, as of January 2024
※18 World Gold Council and State Street Investment Management, Gold Perceptions Survey, as of January 2024

〈用語集〉
・金のスポット価格
スポット市場における金の価格。国際的通貨コード「XAU」で表記される、1トロイオンス当たりの金価格。米ドル建て。
・APAC
「アジア太平洋地域」の略称。東アジア、南アジア、東南アジア、オセアニアを網羅する地域を指します。金融サービスの分野では、通常「APAC」は日本、中国、インド、オーストラリア、韓国、シンガポール、香港など当地理的範囲内の市場群を意味します。
・預託証券(DR)
外国企業の株式を裏付けとする、銀行が発行する譲渡性金融商品。これにより、投資家は国内証券取引所で外国企業の株式を自国通貨建てで取引することができます。
・NISA
「Nippon Individual Savings Account(日本個人貯蓄口座)」の略称。英国の個人貯蓄口座(ISA)の枠組みをモデルとして、日本で2014年に導入された税制優遇投資口座。個人は株式、ETF、投資信託に投資することができ、一定の限度額までキャピタルゲインや配当所得が非課税となります。

【ご留意事項】
本書は、投資の推奨や投資アドバイスを意図したものではなく、そのようなものとして依拠されるべきではありません。
本稿に示されている見解は2025年9月17日時点のSPDRゴールド戦略チームの見解であり、市場やその他の状況によって変わる場合があります。本資料には、将来の見通しと見なされる可能性のある記述が一部含まれています。その様な記述は、将来のパフォーマンスを保証するものではなく、実際の結果や展開はこれら予想とは大きく異なる場合がある点にご注意ください。
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本資料は、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズが作成したものをステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社が和訳したものです。内容については原文が優先されることをご了承下さい。

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Exp date:9/30/2026

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