アジア太平洋地域における金保有量の増加とその構造的背景
(※画像はイメージです/PIXTA)
アジア太平洋(APAC)地域における金保有量は、主要市場に共通する経済的・構造的要因によって増加傾向にあります。堅調な投資家需要は、インドや中国などの国々における文化的親和性によって拍車がかかり、信頼できる価値保存手段としての金の役割を確固たるものにしており、金の継続的な強気モメンタムの主要な原動力となり続けています。本記事は、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントの3名のストラテジストが共同執筆し、アジア太平洋地域の金市場動向を詳しく解説します。
金を裏付けとするETFの普及拡大
APAC地域は、2003年にオーストラリアが世界初の金ETFを立ち上げたことで金ETFの先駆者となり※4、着実に成長する市場の基礎を築きました。2025年6月時点で、当地域の保有量は過去最高の368トンに達し、世界の金ETF保有量の10.2%を占めるまでになりました※5。初期の成長ペースは緩やかで、100トンに達するのに14年かかりましたが※6、2020年以降は中国などの国々も含め、普及が大幅に加速しました。
こうした急増の背景には、経済的不確実性の高まり、持続的なインフレ、現地通貨安、ポートフォリオにおける金の分散効果に関する認知度向上など、マクロ経済面と構造面の複合的な要因がありました。APAC地域における機関投資家と個人投資家はいずれも、金へのエクスポージャーを得るため流動性が高く、透明性があり、コスト効率の高い手段として、金ETFをますます活用するようになっています。
今後の見通しは引き続き堅調です。金価格の持続的な上昇傾向と、税制優遇策や政策改革などの規制面の枠組みの進展によって、非伝統的セクターを含む現地需要は一段と促進されるとみられます。世界の金投資環境におけるAPAC地域の影響力が拡大するにつれて、金ETFは地域の投資戦略において一段と重要な役割を果たすようになるとみられます。
【12/18(木) 『モンゴル不動産セミナー』開催】
坪単価70万円は東南アジアの半額!! 都心で600万円台から購入可能な新築マンション
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社
ヴァイス・プレシデント
ゴールド・ストラテジスト
2024年6月にステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社に入社。グローバルのSPDR(スパイダー)・ゴールド・ストラテジー・チームに所属する日本拠点のストラテジストとして、日本における機関投資家ビジネスおよびファンドやETFを担当するインターミディアリービジネスのセールス活動を、金(ゴールド)とETFプロダクトの専門家としてサポート。
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社に入社以前は、ウェルメイ株式会社のゼネラルマネージャーとして不動産投資の評価や新しい投資機会のソーシング業務に従事。それ以前は、ナットウエスト・マーケッツ証券会社、ソシエテ・ジェネラル証券株式会社、ICBCスタンダードバンクでさまざまな役職を歴任。ICBCスタンダードバンクでは金を含むプレシャス・メタル(貴金属)の営業担当として、ビジネスの推進や顧客リレーションの開拓も担当。ボストン大学経済学学士およびマギル大学大学院経営学修士を取得。また、慶応義塾大学にて日本語プログラムを修了。
なお、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントは、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社が行う資産運用関連業務のブランド名である。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載【ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント】金市場を徹底分析
〈注釈〉
※1 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 6/30/2025
※2 World Gold Council and State Street Investment Management, as of 6/30/2025
※3 World Gold Council and State Street Investment Management, as of 6/30/2025
※4 https://www.lbma.org.uk/alchemist/issue-100/lifting-the-lid-on-the-birth-of-the-gold-etf
※5 World Gold Council and State Street Investment Management, as of 6/30/2025
※6 World Gold Council and State Street Investment Management, as of 6/30/2025
※7 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 6/30/2025
※8 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 6/30/2025
※9 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 6/30/2025
※10 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 6/30/2025
※11 The Stock Exchange of Thailand, State Street Investment Management, as of 6/30/2025
※12 World Gold Council, as of 2/19/2025
※13 The 10 insurers include PICC, China life , Taiping Life Insurance, Sinosure, Ping An P&C, Ping An Life Insurance, Pacific Property, Pacific Life Insurance, Taikang Life Insurance, and New China Life Insurance
※14 https://www.policyaddress.gov.hk/2024/en/p29.html
※15 World Gold Council, Gold Market Insights, as of July 2024
※16 World Gold Council, Gold Market Insights, as of July 2024
※17 World Gold Council and State Street Investment Management, Gold Perceptions Survey, as of January 2024
※18 World Gold Council and State Street Investment Management, Gold Perceptions Survey, as of January 2024
〈用語集〉
・金のスポット価格
スポット市場における金の価格。国際的通貨コード「XAU」で表記される、1トロイオンス当たりの金価格。米ドル建て。
・APAC
「アジア太平洋地域」の略称。東アジア、南アジア、東南アジア、オセアニアを網羅する地域を指します。金融サービスの分野では、通常「APAC」は日本、中国、インド、オーストラリア、韓国、シンガポール、香港など当地理的範囲内の市場群を意味します。
・預託証券(DR)
外国企業の株式を裏付けとする、銀行が発行する譲渡性金融商品。これにより、投資家は国内証券取引所で外国企業の株式を自国通貨建てで取引することができます。
・NISA
「Nippon Individual Savings Account(日本個人貯蓄口座)」の略称。英国の個人貯蓄口座(ISA)の枠組みをモデルとして、日本で2014年に導入された税制優遇投資口座。個人は株式、ETF、投資信託に投資することができ、一定の限度額までキャピタルゲインや配当所得が非課税となります。
【ご留意事項】
本書は、投資の推奨や投資アドバイスを意図したものではなく、そのようなものとして依拠されるべきではありません。
本稿に示されている見解は2025年9月17日時点のSPDRゴールド戦略チームの見解であり、市場やその他の状況によって変わる場合があります。本資料には、将来の見通しと見なされる可能性のある記述が一部含まれています。その様な記述は、将来のパフォーマンスを保証するものではなく、実際の結果や展開はこれら予想とは大きく異なる場合がある点にご注意ください。
提供された情報は、投資助言に該当するものではなく、そのようなものとして依拠されるべきではありません。本情報は、有価証券の購入の勧誘または売却の申出とみなされるべきものではありません。本情報は、投資家の特定の投資目的、戦略、税務上の地位または投資期間を考慮したものではありません。ご自身の税務・財務アドバイザーにご相談ください。
ここで言及されている商標およびサービスマークは、それぞれの所有者の所有物です。第三者のデータ提供者は、データの正確性、完全性または適時性に関していかなる保証または表明も行わず、また、かかるデータの使用に関連するいかなる種類の損害に対しても責任を負いません。
当社の書面による明示的な同意なしに、本著作物の全部または一部を複製、複写もしくは送信し、または第三者に開示することはできません。
コモディティやコモディティ指数に 連動した証券は、全体的な市場動 向の変化や金利の変化、さらには天 候、疾病、通商停止や政治的ないし 規制的な展開、対象コモディティに 係る投機者や裁定者の取引活動な ど、他の要因の影響を受けます。
コモディティへの投資は大きなリスクを伴うため、すべての投資家に適した投資対象ではありません。
過去の実績は、将来の投資成果を保証するものではありません。
本資料は、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズが作成したものをステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社が和訳したものです。内容については原文が優先されることをご了承下さい。
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第345号
加入協会:一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 投資信託協会、日本証券業協会
© 2025 State Street Corporation.
8430467.1.1.APAC.RTL
Exp date:9/30/2026