共有持ち分換金の具体例
共有名義の持ち分を換金する場合、主に次の3つの方法があります。
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共有者に買い取ってもらう(姉の場合)
o 最もスムーズでトラブルが少ない
o 売買価格は市場価値の持ち分に応じて設定可能 -
第三者に売却
o 共有持ち分だけを第三者に売却
o 割引価格になることが多く、買い手が見つかるまで時間がかかる -
共有物分割請求(裁判手続き)
o 最終手段として検討
o 費用と時間がかかり、家族関係の悪化リスクも高い
里美さんは、感情的な争いを避けるため、まずは姉に買い取ってもらう方法を検討しました。
市場価値の計算例
仮に自宅の市場価値を4,000万円とします。
• 夫の持ち分1/4 = 4,000万円 × 1/4 = 1,000万円
• 共有持ち分だけを第三者に売却する場合、割引20%とすると 1,000万円 × 0.8 = 800万円
• 姉に買い取ってもらう場合は、関係性を考慮して1,000万円での合意も可能です
サポートするポイント
里美さんの場合、次の手順で支援します。
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現状の権利確認
o 登記簿を確認し、夫の持ち分1/4が正確に存在することを確認
o 過去の増与・売買の経緯を整理 -
姉との調整
o 売買条件、金額、支払い方法、登記スケジュールを合意 -
換金の実行
o 持ち分売買契約書を作成
o 登記変更を申請
o 現金化
このプロセスにより、里美さんは権利を確保しつつ、姉との関係も守りながら換金することができます。
実務上の注意点
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書類整理
o 権利証、登記情報、過去の増与・売買記録を整理
o 後々のトラブルを防ぐ -
権利確認
o 現状での持ち分、将来的に換金可能かを整理 -
市場価値の見極め
o 共有持ち分は単独で売ると割引される
o 親族間の合意なら正規価格で換金可能
里美さんの学び
共有名義の財産は、権利を確認してこそ活用できます。長年住む親族がいる場合、単純に権利を主張するだけでは解決できません。感情面を配慮しつつ、法的手続きを整理することで、無駄なく資産を活かせます。里美さんは換金した資金を生活費や将来の医療費、老後資金に充て、安心して暮らせるようになりました。長年悩んでいた「使えない持ち分」の問題を解決し、家族関係も維持できました。
まとめ
共有名義の財産を整理するポイントは次の通りです。
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現状の名義・権利を確認する
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過去の増与・売買や登記手続きを整理する
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共有者と話し合い、権利行使の方法を決める
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換金や管理を安全に進める
相続は「争い」ではなく、「家族の未来を守る整理」です。権利確認と手続きを早めに進めることで、安心して財産を活用できます。里美さんは現在、姉との話し合いを進めながら、将来に向けた安心を手に入れる準備をしています。こうした複雑な共有財産も、適切に整理することで生活の安定や将来設計につなげられるのです。
曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
