近年、中小企業への補助金や実質無利子・無保証融資が増加しています。コロナ禍の緊急支援としては一定の効果がありましたが、長期化すると「ゾンビ企業」の延命を招き、日本経済の新陳代謝を阻害する危険があります。本記事では、低生産性企業が生き残ることによる市場・雇用への影響や、事業承継政策との矛盾、そして成長企業の育成に欠かせないデジタル人材投資の重要性について公認会計士・税理士の岸田康雄氏が詳しく解説します。
事業承継政策との矛盾
政府は「中小M&A推進計画」などを掲げ、事業承継やM&Aによる生産性向上を目指しています。しかし、その一方で補助金や無利子融資によって旧態依然とした企業を延命させているのは、本末転倒です。
本来、零細な町工場の経営者は早めに引退し、労働者を資金力とデジタル技術を持つ中堅企業へ承継した方が、従業員の賃金上昇や幸福につながるでしょう。
デジタル人材育成への投資を
日本経済の持続的成長には、情報通信技術(ICT)の活用が不可欠です。付加価値の高い製品・サービスを生み出すことで労働生産性を引き上げられるからです。
そのためには、ゾンビ企業への補助金ではなく、デジタル人材の育成にこそ税金を投じるべきです。労働者が新しい技能を身につけ、成長企業で活躍できる環境を整えることが重要です。
中小企業経営者の苦労は理解できますが、人口減少と高齢化が進むなかで、非効率な企業を守り続けることは、子どもたちに低成長経済という重荷を残すことになります。日本の未来のためには、現役世代が一定の痛みを受け入れ、産業構造を転換する覚悟が求められているのではないでしょうか。
岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年度経済産業省中小企業庁「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。中央青山監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント営業部、みずほ証券投資銀行部M&Aアドバイザリーグループ、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部不動産投資グループなどに在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継とM&A実務を遂行した。現在は、相続税申告と相続・事業承継コンサルティング業務を提供している。
WEBサイト https://kinyu-chukai.com/
著者登壇セミナー:https://kamehameha.jp/speakerslist?speakersid=142
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