AI時代の租税回避戦略と税務当局の対応…富裕層・国際取引・MDRをめぐる最前線【国際税務の専門家が解説】

AI時代の租税回避戦略と税務当局の対応…富裕層・国際取引・MDRをめぐる最前線【国際税務の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

グローバルに広がる税制や租税条約網を組み合わせたタックスプランニングは、これまで弁護士や会計士といった専門家の知識と経験に依存してきました。しかし近年、AIの進展によって複雑な制度を自在に組み合わせ、新たな租税回避スキームを生み出すことが現実味を帯びています。『富裕層が知っておきたい世界の税制【大洋州、アジア・中東、アメリカ編】【カリブ海、欧州編】』を刊行した矢内一好氏が、各国税制・租税条約の活用手法から、MDR(義務的開示制度)や一般否認規定など、今後の対応策について解説します。

 ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中! 

食料品消費税1% 減税×給付付き税額控除の真実
矢内一好(著)+ゴールドオンライン(編集)

父が溶かした退職金【上巻】・【下巻】
小林篤典(著)+ゴールドオンライン(編集)

シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!

各国税制と租税条約を利用したタックスプランニング

国内制度だけで税負担を軽減しようとしても、その選択肢は限られています。しかし、視野を海外に広げることで、より柔軟なプランニングの可能性が開けます。

 

特に個人富裕層においては、法人に比べてプランニングの構造がシンプルであるため、各国の所得税・相続税制度と租税条約を組み合わせることで有利なモデルを設計できる場合があります。実際、世界主要国の税制(所得税・法人税・相続税など)は大手会計法人が公開しており、参考資料も充実しています。

 

さらに、租税条約における配当・利子・使用料の限度税率は国際的な節税スキームに広く活用されています。たとえば、X国で発生した利子所得をY国へ移す際に、両国間の条約が不利であれば、第三国を経由することで源泉税負担を軽減できる場合があります。いわゆるトリーティー・ショッピングと呼ばれる手法です。

 

従来はこうした複雑なスキームの設計は高度な専門家の領域でしたが、今後はAIが膨大な税制データを分析し、効率的な回避スキームを自動生成する時代が到来しつつあります。

税務当局に求められる対応

AI時代の租税回避に対抗するため、税務当局にはどのような対応が求められるのでしょうか。

 

ひとつの方策は、租税回避を防止する法的規定の整備です。しかし課題となるのは、「否認すべき租税回避」と「合理的理由による正当な節税」との線引きです。

 

その具体例が、日本には存在しない一般否認規定(General Anti-Avoidance Rule:GAAR)の導入です。税務当局にとっては強力な武器となる一方、納税者側には「当局の権限が過度に強まる」との懸念が根強く、現状では特定のケースごとに対応する個別否認規定の方が現実的とされています。

 

もうひとつが、義務的開示制度(Mandatory Disclosure Rules:MDR)の導入です。一定要件を満たすタックスプランニングを利用する場合、事前にその内容を税務当局に開示させる仕組みです。MDRは当局の「承認」を意味するものではなく、むしろ一部の納税者が不公平に利益を得ることを防ぎ、納税者間の公平性を確保する制度と位置付けられます。

MDR導入後の課題

MDRが導入されてもすべての納税者が正直に開示するとは限りません。独自に考案した取引スキームを秘匿し、当局に報告しない納税者が現れる可能性もあります。その場合、真面目に開示した納税者からは「不公平だ」との不満が噴出するでしょう。

 

この不公平感を抑えるためには、開示した場合と隠蔽した場合で加算税など制裁に差を設ける仕組みが有効です。これにより「隠すよりも開示する方が有利だ」と納税者に思わせるインセンティブをつくることができます。
 

矢内 一好

国際課税研究所首席研究員

 

富裕層だけが知っている資産防衛術のトレンドをお届け!
>>ゴールドオンライン・エクスクルーシブ倶楽部<<

 

ゴールドオンライン・エクスクルーシブ倶楽部が

主催する「資産家」のためのセミナー・イベント

 

【11月21日(土)0:00~11月23日(月)開催】
税制改正で変化!相続税対策としての「生前贈与」
“直前対策”から“長期計画”へ…
資産税専門のベテラン税理士が徹底解説

 

【11月21日(土)0:00~11月23日(月)開催】
資産規模5億円以上の方こそ知っておきたい
「家族信託」の実践活用術<第1回/基礎知識>

 

【11月24日(火)開催】
2027年1月から適用開始!「貸付用不動産」の評価改正
これからの不動産相続対策はどうなる?

 

【11月24日(火)開催】
プライベートアセット、ヘッジファンド、コモディティ…
世界の富裕層が「オルタナティブ投資」を活用する理由

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧