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各国税制と租税条約を利用したタックスプランニング
国内制度だけで税負担を軽減しようとしても、その選択肢は限られています。しかし、視野を海外に広げることで、より柔軟なプランニングの可能性が開けます。
特に個人富裕層においては、法人に比べてプランニングの構造がシンプルであるため、各国の所得税・相続税制度と租税条約を組み合わせることで有利なモデルを設計できる場合があります。実際、世界主要国の税制(所得税・法人税・相続税など)は大手会計法人が公開しており、参考資料も充実しています。
さらに、租税条約における配当・利子・使用料の限度税率は国際的な節税スキームに広く活用されています。たとえば、X国で発生した利子所得をY国へ移す際に、両国間の条約が不利であれば、第三国を経由することで源泉税負担を軽減できる場合があります。いわゆるトリーティー・ショッピングと呼ばれる手法です。
従来はこうした複雑なスキームの設計は高度な専門家の領域でしたが、今後はAIが膨大な税制データを分析し、効率的な回避スキームを自動生成する時代が到来しつつあります。
税務当局に求められる対応
AI時代の租税回避に対抗するため、税務当局にはどのような対応が求められるのでしょうか。
ひとつの方策は、租税回避を防止する法的規定の整備です。しかし課題となるのは、「否認すべき租税回避」と「合理的理由による正当な節税」との線引きです。
その具体例が、日本には存在しない一般否認規定(General Anti-Avoidance Rule:GAAR)の導入です。税務当局にとっては強力な武器となる一方、納税者側には「当局の権限が過度に強まる」との懸念が根強く、現状では特定のケースごとに対応する個別否認規定の方が現実的とされています。
もうひとつが、義務的開示制度(Mandatory Disclosure Rules:MDR)の導入です。一定要件を満たすタックスプランニングを利用する場合、事前にその内容を税務当局に開示させる仕組みです。MDRは当局の「承認」を意味するものではなく、むしろ一部の納税者が不公平に利益を得ることを防ぎ、納税者間の公平性を確保する制度と位置付けられます。
MDR導入後の課題
MDRが導入されてもすべての納税者が正直に開示するとは限りません。独自に考案した取引スキームを秘匿し、当局に報告しない納税者が現れる可能性もあります。その場合、真面目に開示した納税者からは「不公平だ」との不満が噴出するでしょう。
この不公平感を抑えるためには、開示した場合と隠蔽した場合で加算税など制裁に差を設ける仕組みが有効です。これにより「隠すよりも開示する方が有利だ」と納税者に思わせるインセンティブをつくることができます。
矢内 一好
国際課税研究所首席研究員
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