(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者の入院後、「その後どこで暮らすか」という問題は、介護の現場でたびたび家族に重くのしかかります。一人暮らしや要支援・要介護状態にある親が、退院後に元の生活を続けることが困難な場合、子どもは「施設入居」や「同居」「訪問介護」のいずれかを選ばざるを得ません。しかし、親の“本心”と、子どもの“最善の判断”がすれ違ったとき、その選択は大きな後悔を生むこともあるのです。

「このまま1人で住ませるのは怖い」…娘の切実な思い

「転倒して救急搬送されたとき、本当にヒヤッとしました。幸い骨折だけで済んだけど、年齢が年齢なので、“次”が怖くて」

 

そう語るのは、都内で働く会社員・野村久美さん(仮名・51歳)。一人暮らしをしていた母・和子さん(仮名・79歳)が、今年の春、自宅の玄関先で転倒し、大腿骨を骨折して入院しました。

 

入院中に病院の相談員から言われたのは、「退院後、自宅で一人暮らしを続けるのは難しい可能性がある」という現実でした。

 

「足元が不安定になっていて、杖や手すりが必要になる。本人も物忘れが増えていて、火の元なども心配でした」

 

久美さんは、ケアマネジャーと相談し、母のためにサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)のパンフレットを集め始めました。

 

久美さんがリハビリ中の母に施設入居を提案したのは、退院の2週間前のこと。

 

「自宅は段差が多いし、見守りもないし、施設のほうが安心だよ」と説明したところ、母の表情は一変しました。

 

「私、家に帰るから。施設なんて、私は入らないからね」

 

母の拒否は想像以上に強く、数日後には主治医の前で「絶対に自宅に戻ります」と言い切ったそうです。

 

「年金だけじゃ入れない」「まだそんな年じゃない」「閉じ込められるのが怖い」――母はさまざまな理由を挙げましたが、結局のところ、“自分の居場所がなくなる”という感覚が強かったのかもしれません。

 

和子さんの収入は、月額12万円の年金のみ。貯金は500万円程度と決して多くなく、有料老人ホームは候補から外さざるを得ませんでした。

 

一方、サ高住や軽費老人ホーム(ケアハウス)など、比較的低所得者でも入居可能な施設は存在します。中でも「特別養護老人ホーム(特養)」は要介護3以上の方であれば、月額7〜15万円程度で入居できる施設として注目されています。

 

ただし、特養は地域によっては数ヵ月〜数年の待機期間があるほか、要介護度が低いとそもそも対象外となるため、すぐの入居には向いていない現実もあります。

 

 \1月20日(火)ライブ配信/
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※本記事のインタビューではプライバシーを考慮し、一部内容を変更しています。

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