「じゃあどうすればよかったのか、今でも分からない」
久美さんは結局、実家に手すりと見守りカメラを設置し、訪問介護を手配したうえで、母を自宅に戻すという選択をしました。しかし、それが本当に“最善”だったのか、今も迷いがあるといいます。
「日中の安否確認はできても、夜に不安になったり、寂しくなったりすることまではケアできない。母は“慣れた家で落ち着く”と言うけど、それは本当に安心なのか…」
現在、和子さんは要支援2と認定されており、週2回の訪問介護と週1回のデイサービスを利用しています。ケアマネジャーの提案で、将来的には特養の入所申込も視野に入れているそうです。
高齢者の「住まいの選択」には、本人の尊厳・生活習慣・家族の負担・制度的制約が複雑に絡み合います。特に退院直後のタイミングでは、「元の暮らしに戻りたい」という高齢者本人の思いと、「もう無理はさせたくない」という家族の判断がぶつかる場面が多く見られます。
介護保険制度では、居宅サービス(訪問介護・デイサービスなど)を使いながら在宅生活を続ける支援も整っていますが、孤独や不安をケアできるとは限りません。
久美さんはこう語ります。
「本人の意思を尊重したつもりだけど、もし次に何かあったら…って考えると、不安でたまらないときがあります。でも、施設に無理やり入れていたら、それはそれで後悔していたかもしれません」
高齢者の「その後の暮らし」をどう選ぶか。それは、家族にとってもまた、正解のない選択の連続です。
一度の転倒、一度の入院が、「介護のはじまり」になるケースは決して少なくありません。だからこそ、まだ元気なうちから、本人・家族・専門職が一緒に「将来どうしたいか」を話し合っておくことが、後悔しないための一手になるのかもしれません。
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