「老後は楽しまなきゃ損よね」第二の人生を謳歌していると…
都内に住む山崎由美子さん(仮名・67歳)は、夫・信吾さん(仮名・68歳)と共に3年前に定年退職。
夫婦ともに企業勤めを勤め上げ、現在は年金だけで月28万円を受給。加えて、退職金と長年の積立で作った貯金は約4,800万円。十分すぎるほどの老後資金を手に入れていました。
「月曜は書道、水曜は英会話、金曜は油絵。空いている日は夫と温泉やランチ。これからは“自分のために生きる”って決めていたんです」
コロナ禍が明けてからは、国内旅行や韓国ドラマロケ地を巡るツアーにも参加。夫婦でアクティブに第二の人生を楽しんでいました。しかしある日、そんな日常が一変する“ひとつの通知”がスマートフォンに届きます。
そのLINEは、地方で暮らす一人娘・理沙さん(仮名・35歳)からでした。
「…お願いがあるんだけど、電話できる?」
内容は、夫との別居が始まったこと。そして今後の生活にあたって、子どもを連れてしばらく“実家に身を寄せたい”というものでした。
「“しばらく”って、どれくらい?生活費はどうするの? そう聞いたら、『仕事もこれから探すから、しばらくお願い』と…。もう正直、頭が真っ白になりました」
由美子さん夫妻は子どもが巣立ってから20年以上、2人きりの生活を築いてきました。家は広く、孫が来ること自体は喜ばしいものの、「娘一家の生活そのものを背負う」ことになるとは想定していませんでした。
「『でも、そっちは年金もあって貯金もあるんだから、大丈夫じゃない?』って、さらっと言われて。……あの言葉が一番ショックでしたね」
実際、由美子さん夫妻は“老後の備え”として生活設計してきたものの、孫の教育費・食費・住居光熱費を長期的に支える前提ではありませんでした。
貯金4,800万円あっても、仮に月20万円を取り崩せば、20年もたずに底をつく可能性もあります。さらに物価上昇や医療・介護費など、今後予見できない支出もある中で、「余裕があるから」という理由で想定外の支援を求められるのは、大きな心理的負担となるのです。
