楽天証券の「かぶピタッ（金額指定取引）」…100円から国内株式を買う方法を徹底解説

「株式投資を始めたいけれど、まとまったお金がない」

「投資に回せる予算が毎月決まっている」

「高額な株に一気に投資するのは怖い」

 

このような方におすすめなのが、2025年7月16日から楽天証券で始まった「かぶピタッ（金額指定取引）」です。

 

本記事では、楽天証券が提供する少額取引サービスの1つ「かぶピタッ」の特徴や売買方法について解説します。

 

最後まで読むと、投資初心者の方には株式投資を始めるきっかけに、経験者の方には取引戦略の幅を広げるヒントになるはずです。

 

 

1. 楽天証券の「かぶピタッ」のサービス概要

 

まずは、楽天証券の「かぶピタッ（金額指定取引）」の特徴をざっくり押さえておきましょう。詳細は後ほど解説するので、ここではイメージをつかむ程度で大丈夫です。

 

■楽天証券の「かぶピタッ」のサービス概要

 

ご覧のように、楽天証券の「かぶピタッ」は、通常の100株単位の単元株取引と比べて様々な制約があります。

 

1.1.「かぶピタッ」と「かぶミニ」のサービスを比較

 

楽天証券で国内株式を少額で取引できるサービスには「かぶミニ」もあり、「かぶピタッ」と混乱しがちです。違いを比較表で整理します。

 

■「かぶピタッ」と「かぶミニ」の違い

 

両者の大きな違いは、かぶピタッは「いくら分買うか」の金額指定なのに対して、かぶミニは「何株買うか」の株数指定である点です。

 

ガソリンスタンドでの給油で例えると、金額指定は「5,000円で入るだけで給油する」、株数指定は「30リットルだけ給油する」といったイメージです。

 

どちらも国内株式を少額で取引できるサービスですが、株価が4万円を超えるファーストリテイリング（9983）のような株価の高い銘柄では顕著に違いが現れます。

 

具体的には、「かぶピタッ」は100円（0.0025株）から購入できるのに対し、「かぶミニ」は1株を買うにも4万円が必要です。

 

どちらのほうが優れているというわけではなく、それぞれ特徴が異なるため、ニーズに応じて使い分けることをおすすめします。

 

 

■補足

楽天証券には、1,000円または1株から銘柄を指定し、定期的に自動買付できる「かぶツミ（国内株式積立）」サービスもあります。

 

 

2. 楽天証券の「かぶピタッ」のメリット5つ

 

本章では、楽天証券の「かぶピタッ」を利用するメリットを、次の5つに絞って紹介します。

 

 

それぞれ解説します。

メリット①：100円の少額から投資できる

 

楽天証券の「かぶピタッ」は、100円から1円単位の金額指定で投資できるため、まだ資金が少ない初心者でも気軽に株式投資を始められます。

 

たとえば、任天堂（7974）の株価は13,000円前後なので、通常の単元株（100株）を購入するには約130万円が必要です。しかし、かぶピタッなら100円分だけ買付することも可能で、この場合は約0.0077株を保有することになります。

 

このように、かぶピタッを活用すれば、株価が高い「値がさ株」も投資候補となり、選択肢の幅が広がります。また、投資予算が10万円しかない場合でも、10銘柄に1万円ずつ均等に分散するなど、自分好みのポートフォリオを組むこともできるようになります。

 

メリット②：定期的に買付することで100株の保有を目指せる

 

楽天証券の「かぶピタッ」を利用して、たとえば毎週月曜日に同じ銘柄を5,000円ずつ買い続ければ、将来的には100株に到達し、株主としての権利を得られます。

 

かぶピタッには積立機能がなく、毎回手動で発注する手間はありますが、時間を分散して定額を買付することで平均購入価格を平準化でき、ドル・コスト平均法と同じ効果を得られます。これは投資信託の積み立てと同じ仕組みで、高値づかみを避けられるだけではなく、自分で売買タイミングを図る必要もないため、特に初心者にはおすすめです。

 

なお、楽天証券の「かぶツミ（国内株式積立）」を利用すれば、自動積立で100株の保有を目指すこともできます。

 

ただし、かぶツミは株数指定による買付なので、1株を設定した場合は、今週は1,000円、来週は900円、再来週は1,200円といったように、買付金額にバラつきが生じます。

 

株数指定でもドル・コスト平均法に近い効果を得られますが、定額買付にこだわるなら、かぶピタッがおすすめです。

 

 

メリット③：楽天ポイントで投資が可能

 

楽天証券の「かぶピタッ」では、楽天ポイントを1P＝1円として買付代金の一部または全部に利用できます。

 

楽天市場でのネットショッピングや日常の買い物で楽天カードを提示して貯まった楽天ポイントを活用すれば、現金を使わずに株式投資を始めることも可能です。

 

ただし、かぶピタッで利用できるのは通常ポイントのみで、期間限定ポイントは対象外となっています。

 

メリット④：株数に応じて配当金を受け取れる

 

楽天証券の「かぶピタッ」では、0.1株など1株未満の株式の保有であっても、保有株数に応じた配当金（企業が得た利益を株数に応じて株主に分配するもの）を受け取れます（1円未満は切り捨て）。

 

わずかな金額でも配当金を受け取れたら、株式投資をしている実感がわき、100株の保有を目指すモチベーションにもつながります。

 

ただし、株主優待は100株以上の保有が基本（一部には1株から実施している企業もあり）なので、かぶピタッでたとえば0.3株を保有していても優待を受け取ることはできません。また、議決権も付与されないため、株主総会に参加することもできません。

 

メリット⑤：NISA成長投資枠を使い切れる

 

「かぶピタッ」は楽天証券のNISA成長投資枠でのみ利用可能で、年間投資枠は240万円と決まっています。

 

100円以上1円単位の金額を指定して投資できるため、たとえば12月下旬の段階でNISA成長投資枠で2,395,687円を使っていた場合、国内株式を残り4,313円分購入することで、240万円の枠をぴったり使い切ることも可能です。

 

このように、かぶピタッを活用すれば、NISAの非課税のメリットを最大限に引き出せます。

 

 

 

 

3. 楽天証券の「かぶピタッ」のデメリット5つ

 

メリットの次は、楽天証券で「かぶピタッ」を利用する前に知っておくべき注意点を5つ紹介します。

 

 

それぞれ解説します。

デメリット①：取引銘柄が限られる

楽天証券の「かぶピタッ」で取引できる銘柄は、すべての上場株式ではなく、楽天証券が定めた1,011銘柄に限られます（2025年9月5日時点）。

 

今後、取引銘柄は拡充される可能性はありますが、希望する銘柄が対象外の場合もあることを知っておきましょう。

 

なお、楽天グループ（4755）や一部ETF、REITなどは、もともと対象外となっています。

 

デメリット②：約定タイミングは1日1回のみ

 

楽天証券の「かぶピタッ」の約定結果は、1日1回、原則として9時30分ごろに反映されます。

 

これは、かぶピタッが楽天証券との相対取引であり、東証前場寄付価格（ほとんどの銘柄は9時に決定）を基準に、楽天証券が市場外で売買を成立させて約定価格を決定する仕組みだからです。

 

かぶピタッは通常の東証の取引とは仕組みが異なるため、前日の終値から離れた価格で約定する場合や、日計り取引（デイトレード）ができないといった制約があることを知っておきましょう。

 

デメリット③：スプレッドの隠れコストがある

 

楽天証券の「かぶピタッ」の取引手数料は無料ですが、0.22%のスプレッドが設定されているため、注意が必要です。

 

スプレッドは約定代金に対してかかるのではなく、約定単価に上乗せされる形で徴収されます。

 

具体的には、買付時は約定価格に上乗せ、売却時には約定価格から差し引かれる仕組みです。約定代金が10万円の場合、0.22%をかけて220円と算出するのではありません。

 

東証前場寄付価格が1,000円の場合、9時30分に決まるかぶピタッの約定単価は、次のようになります。

 

• 買い：1,000円に0.22%を加算すると1,002.2円。1円未満は切り上げで、約定単価は「1,003円」。
• 売り：1,000円から0.22%を減算すると997.8円。1円未満は切り捨てで、約定単価は「997円」。

 

そして、この銘柄を1万円の金額指定で取引した場合、約定株数は次のようになります（小数点9桁以降は切り捨て）。

 

• 買い：10,000円÷1,003円＝9.97008973株
• 売り：10,000円÷997円＝10.0300903株

 

スプレッドは0.22%と小さいため、過度に気にする必要はありません。しかし、取引回数が増えると負担額が大きくなる可能性もあるため、頭の片隅に入れておきましょう。

 

デメリット④：スマホサイト向けに設計されている

 

「かぶピタッ」は、楽天証券のスマホサイトで取引することが前提で設計されています。そのため、スマホアプリの「iSPEED」やPC取引ツールの「マーケットスピードⅡ」からは注文できません。

 

ただし、かぶピタッは1分1秒を競うトレードではないため、スマホの画面でも十分に対応可能です。

 

もしPCの大きな画面でじっくり取引したい場合は、PCからスマホサイトにアクセスして利用することもできます。

 

 

最初は少し違和感があるかもしれませんが、利用上の不便はほとんどないはずです。

 

デメリット⑤：取引できるのは楽天証券のNISA成長投資枠のみ

 

「かぶピタッ」は、楽天証券のNISA成長投資枠でのみ利用可能で、特定口座と一般口座では取引できません。

 

NISA口座は1人1口座しか開設できないため、他社のNISA口座で取引している人は、楽天証券のかぶピタッを使うことができません。

 

今後、課税口座でもかぶピタッを利用できるようになることを期待しましょう。

 

 

 

4. 楽天証券の「かぶピタッ」の注文方法

 

本章では、楽天証券でかぶピタッを注文する手順を、実際のスマホ画面を使って紹介します。

 

購入する銘柄は任天堂（7974）で、3,000円分を買付します。流れは次の5ステップです。

 

 

順番に解説します。

STEP1：ログイン後、「メニュー」＞「国内株式」をタップ

楽天証券のスマホサイトにログイン後、画面左上の「メニュー」をタップします。

 

 

一覧メニューが表示されたら、「国内株式」をタップしてください。

 

 

STEP2：銘柄を検索して「注文」をタップ

銘柄を探す方法はいくつかありますが、ここでは、検索ボックスに銘柄名（一部でもOK）を入力するシンプルな方法を紹介します。銘柄コードがわかっている場合は、コードを入力すると一発で表示できます。

 

検索ボックスに「任天堂」と入力したら、その右側の虫眼鏡マークをタップしましょう。

 

 

注文したい銘柄が表示されたら、「注文」をタップします。

 

 

STEP3：「らくらく注文」を選択して金額を指定する

「かぶピタッ」の対象銘柄の場合は、銘柄名の上に「かぶピタッ」のアイコンが表示されます。

 

 

注文の種類が表示されたら、左側の「らくらく注文」を選びましょう。

 

 

そして、金額指定（かぶピタッ）の箇所で希望の買付金額を選択します。1,000円、5,000円、10,000円以外の金額の場合は、「入力」ボタンをタップすると、希望の買付金額を入力できます（ここでは「3,000円」）。

 

入力したら、「確認画面へ」をタップしましょう。

 

初めてかぶピタッを取引する場合は、このタイミングで『国内株式金額指定取引約款』が表示されるので、目を通して「同意して次へ」に進んでください。

 

 

STEP4：利用する楽天ポイントを入力する

注文確認画面が表示されるので、間違いがないか慎重に確認しましょう。楽天ポイントを利用する場合は、「変更」をタップします。

 

 

利用ポイント数を入力（ここでは「30ポイント」）したら、「変更する」をタップしてください。

 

 

STEP5：取引暗証番号を入力して「注文する」をタップ

改めて注文内容を確認し、取引暗証番号を入力したら、最後に「注文する」をタップします。

 

 

次の画像のように、「買い注文を受け付けました」と表示されるのを確認しましょう。

 

 

取消する場合は、「注文照会」から行えます。

 

なお、かぶピタッで購入した国内株式を売却する場合は、「保有商品一覧」より該当銘柄をタップし、「売る」＞「かぶピタッ™（金額指定）」の順に進んでください。

 

 

売却方法は、「金額指定売却」と「1株未満売却」の両方に対応しています。

 

 

 

5. 国内株式の「金額指定取引」サービスを比較

 

主要ネット証券5社（楽天証券、SBI証券、松井証券、マネックス証券、三菱UFJ eスマート証券）のなかで、国内株式の金額指定取引サービスを提供しているのは楽天証券だけです。しかし、SMBC日興証券でも「キンカブ」という名称で同様のサービスを実施しています。

 

ここでは、楽天証券の「かぶピタッ」とSMBC日興証券の「キンカブ」を比較します。

 

■国内株式の「金額指定取引」サービスの比較

 

SMBC日興証券の「キンカブ」は、1つのサービスで「金額指定」と「株数指定」の両方に対応している点が特徴です。対象銘柄が多く、特定口座や一般口座でも購入できるなど、柔軟性が高くなっています。さらに、金額指定では「定期定額買付」にも対応しており、投資信託の積立のように自動でコツコツ買付することも可能です。

 

一方、楽天証券の「かぶピタッ」は1円単位で購入できるため、NISA成長投資枠（年間240万円）を無駄なく使い切れます。さらに、楽天ポイントを使って投資できるので、現金を使わずに気軽に株式投資を始めることができます。

 

どちらにも一長一短があるため、ご自身の投資スタイルや目的に合ったサービスを利用することをおすすめします。

 

 

 

6. よくある質問

 

最後に、楽天証券の「かぶピタッ」に関するよくある質問に7個回答します。

Q1. 楽天証券の「かぶピタッ」で国内株式を買うなら、どのような銘柄がおすすめですか？

かぶピタッの活用方法に正解はありませんが、たとえば次のような使い方が考えられます。

 

• 値がさ株を少しずつ買って100株を目指す
• 魅力的な株主優待がある銘柄をコツコツ買って100株を目指す
• 高配当銘柄を少しずつ買って、将来の定期収入につなげる
• 成長性が高い銘柄を複数買い、最も期待できる銘柄を買い増す
• 割安な銘柄を複数買い、長期的な上がりを狙う

 

かぶピタッは100円から購入できるため、値動きを確認するために少額だけ買って様子を見たい場合にもおすすめです。少しでも資金を投じることで、投資への真剣度が高まります。

 

Q2. 楽天証券の「かぶピタッ」では「自動スイープ」は利用できますか？

できます。楽天証券と楽天銀行の口座を連携（＝マネーブリッジ）して、「自動入出金（スイープ）」の設定をしておくと、かぶピタッの注文をする際に証券口座の残高が不足していても、楽天銀行の残高から不足分を入金してくれます。

 

 

Q3. 楽天証券の「かぶピタッ」で買った株式は、いつから売れるようになりますか？

かぶピタッで買付した銘柄の売却可能タイミングは、売却方法（売却注文の種類）によって次のように異なります。

 

• 金額指定（1株未満売却含む）：約定後、当日より売却可能
• 株数指定：約定日の翌営業日の17時以降より売却可能

 

Q4. 楽天証券の「かぶピタッ」では、「配当金」は受け取れますか？

かぶピタッでは、1株未満の株式の保有であっても、保有株数に応じた配当金を受け取れます（1円未満は切り捨て）。

 

一方、株主優待は100株以上の保有が条件となるため、1株未満では受け取れません。ただし、1株でも割引券などの優待を実施している企業も一部にはあります。

 

Q5. 楽天証券の「かぶピタッ」には、「積立機能」はありますか？

かぶピタッには自動積立機能はなく、1回限りのスポット買付のみです。

 

Q6. 楽天証券の「かぶピタッ」で買った株式は、「貸株」に出すことはできますか？

楽天証券の「かぶピタッ」で買った株式は、貸株（保有する株式を機関投資家に貸し出すことで、株数に応じて金利を受け取れるサービス）に出すことはできません。

 

Q7. 楽天証券の「かぶピタッ」に関するキャンペーンはありますか？

楽天証券では、2025年8月28日まで『「かぶピタッ」リリース記念！100ポイントで株デビューキャンペーン』を実施していましたが、現在実施しているかぶピタッに関するキャンペーンはありません。新たなキャンペーンが始まり次第、本ページでも紹介します。

 

 

7. まとめ

（楽天証券公式YouTubeチャンネル『【楽天証券】「かぶピタッ™」コンセプトムービー』）

 

この記事では、楽天証券の「かぶピタッ（金額指定取引）」について解説しました。

 

最後に、かぶピタッはどのような人に向いているかを整理します。

 

 

かぶピタッは、国内株式を従来の株数指定ではなく、金額指定で購入できる新しいサービスです。投資信託では毎月の定額買付が浸透してきましたが、株式を金額指定で買付できるのは、主要ネット証券5社では楽天証券だけです。

 

本記事を参考に、楽天証券の少額取引サービスを上手に活用して、投資の可能性を広げるきっかけにしてください。