(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢化が進むなか、多くの人が自分事として考えている「介護」の問題。ある独身50代女性の例から、家庭内における介護負担を考察します。

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なし崩し的に両親を見ることになった、50代独身長女

「親の介護は、だれがどこまでやればいいのか…」

 

そういってうつむくのは佐藤陽子さん(仮名/55歳)です。これまで一度も実家を出ることのなかった陽子さんは、母親を見送ったあとも、ひとりで父親・佐藤武さん(仮名/82歳)の生活をサポートしてきましたが、年齢を重ねた武さんは、いつの間にか認知症が進み、自分でできることが減っていきました。

 

「父は悪い意味で〈昭和の父親〉の典型です。自分が家事をやるなんてもってのほか。ボタンひとつでお風呂のお湯がたまる、給湯システムすら自分で使おうとしません。指一本動かすだけなのに…」

 

陽子さんは都内の短大を卒業後、一般企業に入社。自分もそのうち結婚するだろうと思っていましたが、あっという間に30代となってしまったといいます。そしてそのころ、さまざまなプレッシャーやストレスが原因で体調を壊してしまい、退職。一時的に無職になりました。その後はアルバイトや契約社員などを繰り返しながら、7年前に現在の中小企業に正社員として入社し、いまは事務関連を担当する部署で働いています。給料はギリギリ20万円に届きませんが、残業が一切ないのがメリットだといいます。

 

「私には4歳年下の弟がいますが、20代半ばで結婚し、いまは実家を離れています。両親の援助で早々に家を建て、子ども2人と奥さんと、仲良く暮らしています。私は母の三回忌以来、会っていませんが…」

「私の両親は、弟家族にしか関心がないようで、私が体を壊して退職しても、心配することもなく、〈あらそう、気をつけてね〉のひとことで済ませるような人たちです」

 

陽子さんは自宅を離れて独立したかったそうですが、それが実現できる収入が得られないまま、いまの年齢まで来てしまいました。

次ページ母を見送り、会社員をしながら父の世話を…
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