(※写真はイメージです/PIXTA)

「失われた30年」からの脱却へ、日本に眠る2200兆円の個人資産の活用が急務となっています。その鍵となるのがスタートアップ投資ですが、近年、制度改正によって一般個人にも非上場株投資の道が拓かれました。これは日本経済再生の大きな好機といえます。本記事では、HiJoJo Partnersの創業者で、ユニコーン企業に投資するファンドの販売に携わっているメンザス・スピリドン氏による著書『ユニコーン投資のロマンとリアル』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集して、スタートアップ投資が日本社会にもたらすインパクトと、経済再生への展望について解説します。

起業は若者の専売特許ではない

有望なスタートアップを増やすには、起業する人の母数を増やす必要がある。でもそれは、米国のように若いうちから起業を目指すことを推奨すれば解決するというものではない。

 

教育制度や人の意識を劇的に変えられるのならば話は別だが、あまり起業に向かない日本人のメンタリティをいきなり変えることは難しい。起業したいという若者はどんどん支援すればいいが、そう思わない若者の志向を変えるのは至難の業だ。

 

日本ではむしろ、中高年になってから起業するほうが、エンジンがかかりやすい可能性がある。新卒で企業に就職しても、30代40 代と年齢を重ねるうちに、現状のキャリアに閉塞感を抱える人が一定数出てくる。上司の姿を見て、あれを目指そうとは思えない、この会社で一生過ごしていいのか、あるいは自分だったらこんなビジネスをするのになどと悩み、新たな道を目指そうとする人もいるだろう。

 

要するに、10年20年とキャリアを積んできたからこそ、課題意識やチャレンジしたい気持ちが生まれてくる人がいる。そして、チャレンジの成否にかかわらず、起業した経験はその人自身のキャリアにも、社会にも大きく貢献できるはずだ。

 

私自身、最初の起業を経てみずほ証券に入社し、二度目の会社員生活をスタートしたとき、自分が組織の一員というよりも社長の目線で仕事をしていることに気づかされた。起業という経験は、それがたとえ失敗に終わったとしてもビジネスパーソンとしての価値を大きく向上させる経験だ。それが2~3年という短い期間で終わってしまっても、それこそ会社員として働く20年分に相当する経験だといっても過言ではない。

 

このような人を雇い入れたら、スーパーマンのごとく組織で活躍するのは間違いない。起業で失敗した人をエントリーから排除するというのはもってのほかで、こうした人材の価値を認識しないと損をする。

 

ゼロから起業をして、人や資金を集めるなど、事業を軌道に乗せるために必死になって取り組んだ経験は、たとえ失敗したとしてもその人のビジネススキルを大幅に向上させることは間違いなく、組織に戻っても大きな貢献ができる人材になれる。

 

唯一の懸念として、中高年は住宅ローンや子どもの教育などでお金がかかる年代でもあることだ。こうした壁を打ち破るために、2~3年の期間に絞って生活費を支援するような制度があってもいいかもしれない。ある程度の期間生活の支援をし、なおかつ起業の経験を評価するという文化が生まれれば、日本で有力なスタートアップが続々と登場することも十分あり得る。

 

政府や地方自治体も起業を支援する施策に力を入れているが、対象が若者、女性、シニアという層に限定するものも散見される。このような人たちの支援はもちろん大切ではあるが、30~50代ぐらいの最も成功しやすい層を排除しないでほしいと切に思う。

 

米国ではPalantir 創業者のピーター・ティール氏が20 under 20 といって、20歳未満の学生に大学の中退や、大学に行かないことを条件に毎年20人に10万ドルを与え、好きなことで起業させる取り組みを行っている。これが大人気で、選定される競争率は高く、ハーバード大学に入学するより困難らしい。ただ、このしくみをそのまま日本に取り入れようとすると無理がある。むしろ思い切って40 over 40 として40代以上の人たちに起業の資金を与えて、生活費や子どもの学費をカバーできる資金を2〜3年分確保させるのが面白いと思い、いつか賛同してくれる人たちを募って実現してみたいと考えている。

日本がアジアの金融センターに

国民の優秀さや勤勉さ、相手を思いやる気持ち、教育水準の高さに加え、起伏に富んだ地形と水資源、そして豊富な観光資源など、日本にはたくさんの強みがある。そのなかで、私がこれから最も注目すべきと考える日本の強みは「現金をたくさん持っている」ことだ。

 

これまで強みとしてはほとんど認識も活用もされてきていないが、スタートアップを成長させ社会を活発化するという意味では、強力なアドバンテージとなる。

 

日本の個人は、2200兆円を超す家計金融資産を持っており、その半分以上が現預金として活用せずに眠り続けている。日本のGDPは米国の4分の1にも及ばず、日本の家計金融資産全体の額も米国の2割にも満たないが、家計金融資産に占める現預金の額だけは、日本と米国はほぼ同じだ。この莫大な現預金の大半は、富裕層が握っているかもしれないが、リスクを取れる人たちがいくらかでもスタートアップに資金を回し、リスクを取ってチャレンジする起業家たちを支援する土壌が育てば、日本はきっと変わる。「失われた30年」を取り戻し、シンガポールや香港に取って代わられてしまったアジアの金融センターの地位を、再び奪還する日がやって来てもおかしくはない。

 

今、世界中のユニコーンやその予備軍とされるスタートアップ企業が、地球の未来を、人々の暮らしを、大きく変える挑戦をしている。

 

いつまでも将来の不安におびえる側に居座り続けても、何も変わることはなく、変えることもできない。しかし、スタートアップをさまざまな形で支援したり、投資をしたりすることで、私たちは彼らと同じ船に乗り込むことができる。そしてなにより、世界を変えていく当事者の側に立てるのである。

 

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本連載は、2025年9月19日に刊行されたメンザス・スピリドン氏の著書『ユニコーン投資のロマンとリアル』(幻冬舎メディアコンサルティング)から一部抜粋・再編集したものです。

ユニコーン投資のロマンとリアル

ユニコーン投資のロマンとリアル

メンザス・スピリドン

幻冬舎メディアコンサルティング

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