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いまや世界を動かすのはユニコーン企業だ
ユニコーン企業とは、推計される企業評価額が10億ドル以上の非上場企業を指す言葉だ。米国調査会社のCBインサイツによると、2025年3月現在で世界中に1200社を超す企業が存在する。なかには企業規模が巨大化するユニコーンもあり、100億ドル以上を指す「デカコーン」や、1000億ドル以上を指す「ヘクトコーン」といった新しい呼称まで生まれている。
そのなかで最も評価額が大きいのはSpaceXだ。私が出会った2015年当時は100億ドルほどの企業だったが、いまやその評価額は3500億ドルに達しており、日本円に換算すると52兆円を超える。日本で時価総額が最大の上場企業であるトヨタ自動車でも45兆円ほどだから、SpaceXがいかに巨大な企業であるかが分かると思う。
ちなみに、2番目に評価額が大きいユニコーンは、ショート動画プラットフォームTikTokなどを展開する中国のByteDance、そして3番目には2022年にChatGPTを発表して世界を席巻したOpenAIがランクインしている。
ChatGPTの登場以降、ユニコーン企業の上位にはAI関連の企業が目立つようになった。私たちの生活や仕事を大きく変えようとしている生成AIは、ビッグテックといわれるAlphabet やMicrosoft、Apple なども開発に注力する分野ではあるが、その技術はビッグテックよりもユニコーン企業が牽引しているといえる。
複数のユニコーン企業が群雄割拠する生成AIの世界でも、OpenAI はやはり売上も抜きん出ている。OpenAI が提供するChatGPTは基本無料で使えるサービスであるにもかかわらず、同社の2024年度売上は37億ドルを突破し、2025年度の計画は127億ドルとも報道されている。
ChatGPT3.5が世間を驚かせた2022年末からわずか数年で過去に例を見ない急成長を見せており、これまで、設立から10年以内に売上が10億ドル以上に達した企業は、Google やMeta Platforms(メタ・プラットフォームズ、旧Facebook)など一握りの企業だけだったが、そのスピードを凌りょう駕がしている。
OpenAI は2015年に非営利のAI研究機関として設立された組織で、営利部門を発足したのは2019年とごく最近のことだ。数年ほど前までは収益化が本格化しておらず、商用売上はごくわずかだった。短期間にここまで売上を伸ばしているというのはとんでもなく驚異的なことである。
目下、OpenAI に限らず、AIを手掛けるあらゆる企業がAIエージェントの開発に取り組んでいる。こちらの質問内容を記憶することができるようになったり、思考力が向上したことで、「どうやったら私の仕事を楽にしてもらえますか? 良い提案をするために必要と思う質問をしてください」と投げかければ、驚くほど正確な提案をしてくれるようになったりしている。
さらに、AIエージェントはブラウザを操作してレストランの予約を入れたり、買い物をしたりと人間の代わりに作業をこなしてくれるというものだ。
AIの機能が劇的に進化して、まるで秘書どころか経験豊富な社員・スペシャリストがついてくれているかのような便利さを実感できるばかりか、連携できる産業が多岐にわたることから、マネタイズの余地も大きい。こうした驚異的な成長と革新性を持つユニコーン企業こそが、いまや世界経済や私たちの生活を大きく動かす原動力となっている。
Facebookの登場が、ユニコーンを育てた
ユニコーン企業というキーワードは、2013年頃生まれた言葉だといわれている。米国のベンチャーキャピタリストであるアイリーン・リーが、テック系メディア「TechCrunch」に寄稿した記事のなかで、評価額が10億ドルを超える非上場ベンチャー企業を指す言葉として使ったのが最初だという。
なにしろ上場していないのに評価が10億ドルを超える企業など当時はほぼ存在しない。極めて希少な存在であるとみなされていたことから、西洋に伝わる伝説の一角獣、空想上の生き物であるユニコーンに例えたのだそうだ。
つまり、ユニコーン企業というのは、一昔前なら存在すらしなかった概念だった。なぜなら、企業はある程度の規模になったら上場するのが当たり前で、非上場の状態で成長だけが続くということはあまりなかったからだ。
実際、Apple の設立は1976年で、4年半後の1980年に上場している。Amazonは、創業から約3年で上場した。GoogleやMicrosoftはもう少し時間がかかってはいるが、いずれにしてもここまで巨大な企業になる前に上場している。
その流れが大きく変わったのは、Facebookの登場だ。Facebookは2004年に、当時ハーバード大学の学生だったマーク・ザッカーバーグらが創業したSNS企業だ。2012年に米国NASDAQ(ナスダック)市場に上場した際の初値をもとに算出した時価総額は、約1150億ドルにも達した。超円高だった当時のドル円相場で計算しても、日本円にして10兆円近い金額となり、ハイテク企業としては史上最大のIPOとなった。
なぜFacebook は、上場前にここまでの成長を遂げられたのか。その大きな要因の一つに、同社の株式が上場前のセカンダリー・マーケットで非常に活発に取引されていたことがある。
上場している企業の株式であれば株式市場で自由に売買ができるので、株を買いたい人はいつでも買うことができ、売りたい人はいつでも換金できる。しかし、上場していない企業の株は、基本的には企業が新株を発行する際に直接取得するか、あるいは仲介者を通して、すでに株を持っている者から譲り受けるしかない。持ち株を売りたい株主がいても、株を買いたい投資家とマッチングする機会はあまりなかったのが、“Facebook前”の状況だった。
ところが、Facebookは非上場企業の株式が投資家の間で売買される市場、セカンダリー・マーケットというしくみを活用し、その株式は上場する前から頻繁に売買されていたのだ。
