(※写真はイメージです/PIXTA)

日本のトップ企業、トヨタ自動車の時価総額を超える非上場企業が存在します。イーロン・マスク氏率いるSpaceXです。その評価額は52兆円に達し、ChatGPTで世界を変えたOpenAIなどと共に、今やユニコーン企業が世界経済の新たな主役となっています。なぜこれほど巨大な企業が、上場せずに成長できるのでしょうか。本記事では、HiJoJo Partnersの創業者で、ユニコーン企業に投資するファンドの販売に携わっているメンザス・スピリドン氏による著書『ユニコーン投資のロマンとリアル』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集して、巨大ユニコーンが米国から次々と生まれる背景にある、投資エコシステムの仕組みと日本との違いについて解説します。

上場しなくても資金調達はできる

スタートアップにとって、資金調達は命綱だ。上場というのはその最大の機会でもあるのだが、こと米国のスタートアップは、上場しなくても資金を調達しやすい環境にある。相場環境に左右されることは当然あるものの、有望なスタートアップには、出資したがる投資家が山ほどいる。テンダーオファーはもちろんだが、新株を発行する際も買い手が集まりやすい。

 

有望なユニコーン企業がどんどん登場してくるから資金が集まるのか、資金を集めやすいから有望なユニコーン企業が生まれてくるのか。ニワトリと卵のどちらが先かというような話になってしまうが、とにかくこうした好循環が回っているのは間違いない。

 

日本では、非上場株に投資するのはエンジェル投資家(創業したてのスタートアップに投資する個人投資家)とベンチャーキャピタル、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を含む事業会社などが中心だが、米国ではそれらに加えて投資信託や大学基金、そして年金基金も非上場株投資の重要なプレーヤーだ。年金基金がリスクの高い非上場株を買うというのは、日本では少々考え難いだろうが、海を越えれば運用規模が大きい基金ほど、分散投資先として非上場株が入るのは、むしろ常識になっている。

 

彼らはやみくもにリスクを取っているわけではなく、分散投資の基本的な考え方に沿った運用先を選定しているだけだ。投資先は当然上場株や債券が中心となるが、分散投資先として一定割合のオルタナティブ投資を加えたほうが、値動きは安定すると考えられている。オルタナティブ投資とは上場株式や債券といった伝統的資産とは異なる資産に投資することで、不動産やコモディティ、非上場株がその代表格となる。年金基金などが非上場株に投資する場合、ベンチャーキャピタルが組成するファンドに投資することが多いが、なかには直接出資して株主となるケースもみられる。

 

また、米国のベンチャーキャピタルはスタートアップの設立まもない時期に投資した企業のなかで、順調に成長を続ける企業があればステージに応じたファンドを組成して資金を募り、多額の追加投資をする。有望なユニコーン企業の場合は、出資の希望が殺到するような状況になるが、初期に投資している既存株主であるベンチャーキャピタルは優先して投資する権利を持っている。

 

ちなみに、2025年1月に出された日本証券業協会の「スタートアップへの資金供給のあり方について―日米比較の視点―」という資料によると、スタートアップの資金調達額は日本の場合、2014年から2023年までの10年間を通して、対GDP比で0・03%から多い年でも0・17%の間で推移している。これに対し、米国の場合は直近で落ち込んだ23年でも0・49%、投資が活発化した21年は1・38%に達している。

 

日本は21年頃から政府の後押しもあってスタートアップ投資が盛んになっており、それまでの年間5000億~6000億円程度から8000億~9000億円程度に急増しているが、そのぐらいの金額はNasdaq Private Marketの年間取引量だけで達してしまうほど、米国の非上場企業への投資額は大きいのである。

 

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本連載は、2025年9月19日に刊行されたメンザス・スピリドン氏の著書『ユニコーン投資のロマンとリアル』(幻冬舎メディアコンサルティング)から一部抜粋・再編集したものです。

ユニコーン投資のロマンとリアル

ユニコーン投資のロマンとリアル

メンザス・スピリドン

幻冬舎メディアコンサルティング

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