提案した解決策
私のほうで、永田さんの課題を整理し、次のようなプランを提示しました。
(1)貸宅地は売却して現金化
貸宅地は地主の自由度がなく、収益性も低下傾向にあります。売却することで借入金を返済し、資産のスリム化を図ります。借地人との交渉も含めて整理する方が、将来の安心につながります。
(2)実家300坪は賃貸併用住宅に建て替え
老朽化した実家は取り壊し、永田さんが住む自宅部分と、賃貸用の住戸を組み合わせた「賃貸併用住宅」を建築します。
これにより、
・永田さん自身の住まいを確保でき、家賃の支払いから解放される
・家賃収入が得られるので、固定資産税の支払いにも不安がなくなる
・将来も収益資産として子世代につなげられる
といった効果が期待できます。
(3)借入返済で家計を安定化
貸宅地売却で得た資金を借入金返済に充て、利息負担を軽減します。そのうえで、賃貸併用住宅からの家賃収入を活かして、生活と将来資金を安定化させます。
永田さんの安心
プランを見た永田さん夫婦からは、こんな感想を話してくださいました。
「これまで相続は“守るだけ”だと思っていました。でも、土地をどう活かすかで未来が変わるのですね。住まいと収益を両立できる方法を知って、気持ちが楽になりました。」
実家をただ残すのではなく、生活基盤と収益源に変える。地主相続だからこそできる選択肢です。
【解説】地主相続に潜む課題
永田さんのケースは、地主家族が直面しがちな典型例です。
1. 空き家リスク
広い実家も、住む人がいなければ負担にしかなりません。建て替えや賃貸活用を検討することが必要です。
2.貸宅地の限界
契約更新や集金トラブルなど、地主にとっては悩ましい資産です。売却や整理も選択肢に入れるべきです。
3.借入金の重圧
相続税のための借金は、長期的に家計を圧迫します。早めの返済プランが欠かせません。
4. 次世代への責任
今の判断が、将来の相続人にそのまま引き継がれます。柔軟に資産を組み替えることで、次の世代が苦労しない相続につながります。
「守る相続」から「活かす相続」へ
かつては「土地を持っていれば安泰」と言われました。ところが、令和のいまは固定資産税・管理費・借入返済など、土地は簡単に「負動産」になりかねません。
永田さんのように、
・貸宅地を売却して借入を返済する
・実家を賃貸併用住宅にして住みながら収入を得る
そんな発想の転換が、地主相続の成功につながります。
大切なのは「何を残すか」ではなく、「どう残すか」。守るだけではなく、活かして収益を生み出し、未来につなぐ相続。これこそが、令和の地主家族に必要な戦略です。
まとめ
永田さんのケースは、40代の現役世代が突然相続に直面したリアルな事例です。
広すぎる実家、管理の大変な貸宅地、残された借金――課題を整理し、資産を組み替えることで、安心と収益を両立させる道が開けました。
地主相続の本質は、「土地をどう使うか」で未来が決まるということ。いま資産を見直すことが、次世代に迷惑をかけない最大の相続対策になります。
曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
