もうカツカツです…都心の実家「相続税6,300万円」を払って金融資産ゼロになった〈70代長男〉。さらに襲われた現実に撃沈したワケ【相続の専門家が解説】

もうカツカツです…都心の実家「相続税6,300万円」を払って金融資産ゼロになった〈70代長男〉。さらに襲われた現実に撃沈したワケ【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

親から受け継いだ「実家」。思い出が詰まっている一方で、相続税や固定資産税といった負担に直面するケースは少なくありません。今回ご紹介する茂さんもその一人。母親から実家を相続したものの、6,300万円もの相続税や年間80万円を超える固定資産税に悩まされました。空き家となった実家をどうするのか? 今回のケースをもとに、相続実務士・曽根惠子氏(株式会社夢相続 代表取締役)が解説します。

実家を相続した長男

相続のご相談にお越しいただくお客様の多くは、「実家の相続」をどうするかで悩まれます。今回ご紹介する茂さんも、その一人でした。


今から20年前、茂さんの父親が亡くなられました。相続人は、母親(当時70代、現在は90代)、長男の茂さん(70代)、妹さん(60代)の3人。茂さんも妹さんも独立し、すでに実家を離れていました。

 

父親は遺言書を残されていなかったため、当方がサポートに入り、遺産分割協議書を作成。実家は母親が相続。小規模宅地等の特例を生かして土地は80%減の評価となり、さらに配偶者には税額軽減の特例があるため、母親は相続税の納税はなし。大きな問題もなく相続は終わりました。

広い庭の手入れが生きがいに

実家の敷地は360㎡。その半分は庭です。最寄り駅から徒歩10分以上かかる立地ながらも、都心にあるため土地の評価は高く、路線価は㎡あたり56万円。しかも毎年4~5%も上がっていました。


母親のときの相続税が多額になることはわかっていましたので、土地活用のご提案をしていました。しかし、母親にとって建て替えのための仮住まいや庭の手入れができなくなることを懸念されたのか、実現しませんでした。


庭はイングリッシュガーデン風に整えられ、四季折々の花を育てることが母親の楽しみ。手入れをしながら暮らす日々が母親の生きがいでしたので茂さんも無理に建て替えを進めることはしなかったのです。

母親が亡くなり、相続税は6,300万円に

母親が亡くなったのは3年前のこと。その時点で土地の評価はさらに上がっており、自宅を含めた相続税額はなんと6,300万円にのぼりました。


母親の節税対策は進みませんでしたが、当方では母親の意思を生かした公正証書遺言の作成のサポートをしていました。公正証書遺言は夢相続が証人業務を担当、公証人には出張してもらい、ご自宅で公正証書遺言を作成。公正証書遺言を残していました。


内容は「自宅は長男茂さんに相続させる」というもの。妹さんには区分マンションと預金で全体の3割を分け与えるようにしており、すでに母親から自宅購入資金などの生前贈与を受けていたこともあって、異論はありませんでした。


この遺言書のお陰で、相続手続き自体はスムーズに進みました。ただし、一番評価が高い実家の土地は、茂さんは同居しておらず、自宅は別にあるため、小規模宅地等の特例の適用はできずに、相続税が6,300万円となり、茂さんが5,100万円、妹が1,200万円を納税することになりました。

 

金融資産は2人で等分し、それぞれ4,700万円を相続しました。そのため茂さんも自分で400万円を補えば納税は可能でしたが、結果的に金融資産は残らず、実家だけが手元に残る形となったのです。

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