空き家となった実家 、 固定資産税は年間80万円以上
問題はここからです。母親が亡くなり、実家は空き家となりました。一番の課題が固定資産税です。
茂さんが払った今年の固定資産税は年間80万円。母親が住んでいたときには賃貸収入もあり、支払いに充てられていましたが、今は収入ゼロで税金だけが出ていきます。茂さんには自宅が別にあり、実家に住む予定はありません。
1年目は相続税の申告や登記の手続きで時間が過ぎ、落ち着いたらどうするか考えようとしましたが、結局決断できないまま。その間にも時間は過ぎ、固定資産税は毎年値上がり。3年間で合計200万円以上を支払っています。
「売る」か「活用する」か
空き家のままでは固定資産税がかかるばかり。当方では売却と活用のメリット、デメリットを整理して、ご提案しました。茂さん家族は、「売ってしまうのはもったいない」という意見。そこで選択肢は「活用」に絞られました。
そこで、「活用」のいくつかのプランを提示しました。多世代が暮らせるシェアハウス、音楽や映像に適した防音マンション、間取りに工夫を凝らしたレジデンスなど。家族会議を重ねた結果、茂さんは「安定した需要が見込めるレジデンス」を選択されたのです。
12世帯の賃貸マンションで利回り11%の安定事業
12世帯の賃貸マンションは鉄骨造3階建て、事業費は2億3,000万円。金融機関から35年・1.5%の条件で融資を受けると想定しても、利回りは11%。十分に採算が取れる事業となります。
これにより、固定資産税をはるかに上回る収益が生まれ、茂さん家族の生活を支える新たな柱となります。さらに、土地を有効活用をすることで相続税評価額が下がります。これは茂さんの相続対策となり、相続税はかからなくなります。
「思い出」を残しながら「資産」に変える
茂さんのケースは、多くのご家庭に共通する課題を示しています。
- 実家には愛着があるから売却はしたくない
- しかし、空き家のままでは固定資産税や維持費だけがかかる
- 結果的に「負動産」となり、家計を圧迫してしまう
このジレンマにどう向き合うかが、相続後の大きなテーマです。
今回、茂さんは「活用」という答えを選ばれました。愛着ある土地を守りながらも、資産として収益を生む形に変えるのです。これは「思い出」と「資産」を両立させた好例といえるでしょう。
曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
