(※画像はイメージです/PIXTA)

米経済の先行き不透明感に不安を感じる人が増え、資産をどう守るべきか悩む声が高まっています。こうしたなか、金価格は過去最高を更新。安全資産としての存在感を一段と強めています。本記事では、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントが、そんな金が上昇する背景にあるFRBの政策や地政学リスク、中央銀行の動向、脱ドル化の潮流などを整理し、2025年9月の金の現状と今後の金価格の見通しを5つのデータから読み解きます。

「債券市場」は金の値上がりに有利な状況か

◆債券市場の動向は金に追い風か

足元で進む米国債のイールドカーブのブル・スティープ化は、米ドル安ならびに米国の財政優位への懸念台頭を通じて、金価格の上昇をサポートするでしょう。

 

米国債の2年/30年スプレッドは2024年半ばの逆イールド状態から2025年8月には+130bpの順イールドへシフトしており※2、そのほとんどは米2年国債利回りの低下によるものです。

 

最近の月次データや調査でインフレ上昇が示されるなか(米貿易・関税政策が一因)、OBBBAによる財政刺激効果や財政赤字の拡大にもかかわらず、FRBは再び利下げを実施する態勢にあります※3

 

◆短期金利低下と長期金利高止まりの効果

短期セクターの利回り(名目および実質)が低下すると同時に、財政政策による景気刺激効果およびインフレ率の力強さにより長期債利回りは比較的高止まりしており、デューレーション・ヘッジおよびインフレ・ヘッジとしての金の役割は高まっています。これは総じて米ドルにとってマイナスの現象であり、デノミネーション(通貨価値の低下)効果を通じて金の強気材料となっています。

 

◆FRBへの信認低下が金を後押し

債券市場がFRBのハト派姿勢の強まり――そしてFRBの独立性およびインフレファイターとしての信認をめぐる懸念――を織り込めば、フィアット通貨の代替資産ならびにヘッジ手段としての金の需要に有利に働くでしょう。

 

たしかに、金価格は8月後半に急騰し、1オンス3,450ドル近い最高値で8月の取引を終えることができました。当社は四半期末までに3,600~3,700ドルのレンジ近くまで急騰する確率は五分五分とみています。

 

出所:ブルームバーグ・フィナンシャルL.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント(2024年~2025年8月)
[図表2]米国で上場する主要なビットコインETFと金ETFの資金フロー
出所:ブルームバーグ・フィナンシャルL.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント(2024年~2025年8月)

 

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〈注釈〉
※1 Source: IMF, as of 12/31/2024.
※2 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 8/31/2025.
※3 Source: BLS, University of Michigan, as of 8/31/2025.
※4 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 8/31/2025.
※5 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 8/31/2025.
※6 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 8/31/2025.
※7 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 8/31/2025.
※8 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 8/31/2025.
※9 Source: Eichengreen, Barry, Livia Chiţu and Arnaud Mehl, as of 8/31/2025.
※10 Source: IMF, State Street Investment Management, as of 3/31/2025.
※11 Source: World Gold Council, as of 6/30/2025.
※12 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 8/31/2025.
※13 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 8/31/2025.
※14 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 8/31/2025.
※15 Source: World Gold Council, as of 6/17/2025.
※16 Source: World Gold Council, as of 6/17/2025.

〈用語集〉

・中央銀行……国または国家連合のために、貨幣および信用の創造と分配を独立性を持って管理する金融機関

・フィアット通貨……政府が法定通貨であると宣言した貨幣ですが、金や銀といった現物のコモディティで裏付けられていません。フィアット通貨の価値は、発行政府に対する公衆の信頼と、交換手段としての集団的受容に由来しています。

・金のスポット価格……スポット市場における金の価格。国際的通貨コード「XAU」で表記される、1トロイオンス当たりの金価格。米ドル建て。

・LBMA午後金価格(米ドル/オンス)……LBMA金価格はIBAが独立して管理し、価格算出のためのオークション・プラットフォームを提供していますが、知的所有権はLBMAに帰属します。プラットフォームは、電子的に取引および監査が可能で、証券監督者国際機構(IOSCO)の金融ベンチマークに関する原則に沿って設計されています。

・実質金利……インフレ調整後の金利。物価上昇の影響を取り除くことで、真の借入れコストおよび投資による実際の利回りを反映します。

・米連邦公開市場委員会(FOMC)……米連邦準備制度内にある委員会で、金融政策を決定します。

・連邦政府赤字……米国政府の歳出額(支出額)が、税金やその他の源泉からの歳入額(受取額)を上回る額を示します。政府がある会計年度に徴収した金額以上に支出をした場合、財政赤字を抱えることとなり、このギャップを穴埋めするため、米国債を発行して資金を借り入れる必要があり、国の累積債務の増加につながります。

・脱ドル化……各国が国際貿易、金融取引、外貨準備における米ドル依存を減らすプロセスで、多くの場合、その背景には地政学的動機、制裁リスク、自国通貨の主権確保の取り組みがあります。


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本稿に示されている見解は 2025 年8月 31 日時点の SPDR ゴールド戦略チームの見解であり、市場やその他の状況によって変わ
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