工事期間中の機会損失を最小限に抑えられる
床下に注入されたウレタン樹脂は発泡しながら、即座に固まり始め、およそ1時間後にはほぼ最高強度に達します。
ドリルで床に孔を開けて樹脂を注入すれば、すぐに床が持ち上がる。本当に、あっという間に床は水平を取り戻します。修正するトータルの面積、作業を行う施工機械(人員)数、現場の条件にも左右されますが、たとえば150平方メートル程度の広さの場合、施工機械1台でも約7時間程度で作業は終了します。
150平方メートルというと、コンクリート打替え工法なら費やす日数は10日以上かかる面積ですから、いかに短い時間かがおわかりいただけるのではないでしょうか。
仮にその6倍以上である1000平方メートルの面積だったとしても、施工機械の台数を増やせば同じく1日(約7時間)で終わります。投入する機械の台数を増やしていけば、その分だけ工期は短縮できるのです。また、養生期間もなく、施工後はそのまますぐに建物を使うことができます。
作業範囲が広大で、数日〜数週間かかる場合でも、作業の終わった区域から使っていけるようになります。
こうしてスピーディに終わる工事ですから、ほとんどの建物で操業を止めることがありません。
工場なら、工事期間中であっても製品の生産ができますし、倉庫であれば保管している荷物を他所に移動させる必要がありません。店舗でも同様です。休業したり、仮設店の設営などまったく必要ないのです。
もっとも、そうするためには、建物の管理者、使用者との事前の打ち合わせが重要です。
施工のために定休日が使えるのか。使えないのだとしたら、夜間工事をするという方法もあります。後述しますが、騒音・振動がほとんど発生しない工法ですので、夜間に工事をしても近隣に迷惑をかけることはありません。
強度とコストのバランスをとる工夫が必要
そして、前回、お話ししたように、相当大きな荷重ごと床を上げることもできます。ただし、そうすることによって、かかる時間はさほど変わりませんが、荷重が大きい分、強度を高めなければなりませんから注入するウレタン樹脂の量、つまり材料費が増えることになります。下のグラフをごらんください。ウレタン樹脂は、密度が高まるほど強度も高まるのです。
■ウレタン樹脂の密度と圧縮強度の関係
( 適用規格JIS A 9526)
荷をどけて材料費を抑えるのか、荷の移動コストはかけずに材料費をどう捻出するのか。もちろん、現場、現場によって状況は異なりますから、それぞれに対応できる施工技術者の工夫が必要になることはいうまでもありません。